コウスケの家はマンションの4階で、中はさっぱりとしていた。
「お邪魔します。お!キレイな家だな。花とかあるし。いい匂いがする」
俺は靴を脱いであがる。コウスケが後に続いてあがった。
「まぁな。俺お坊ちゃんやから。なら、荷物は俺の部屋にでも置いてくれ。そこ行って右」
俺は言われたとおりコウスケの部屋に入った。
見ると、部屋の壁にはコウスケの17年間の思い出が写真となって飾られている。
前の学校の友達と楽しそうに写ってたり、集合写真だったり、野球チームとの写真だったり。
俺はそれを眺めていた。そうしていると、なんだか寂しくなった。
改めて、コウスケが何度も転校してたことがわかって、同じように、いつかここからもいなくなってしまうような気がした。
「おい!ジュンキ。鍋作るぞ!」
コウスケが俺を呼びにきた。
「あ、おう!」
俺はコウスケの後について、キッチンへ。
「なぁ、コウスケ?転校って辛かったりすんの?」
俺は慣れない手つきで白菜を切りながら聞いてみた。
コウスケは俺の隣で手際よく下ごしらえを済ませていく。
「ああ、多少わ。俺、なんとか友達には恵まれてたから、辛いときもあった。でも馴れた」
「そっかぁ」
俺は手を止めてコウスケを見ていた。
コウスケはちょうどリンゴを擦ろうしている。
「どしたんや?ジュンキ。やっぱリンゴはやめとくか?」
コウスケも手を止めて俺を見た。
「いや、俺、転校とかしたことないから、どんな感じなんかなぁって。そんなに頻繁にはしないんだろ?転校。卒業まではおるよな?」
うんと言ってほしい。
「どうやろな。でも俺もここで卒業したいかな。なんやジュンキ、俺のことを心配してくれとるんか?」
コウスケはふざけてそう言った。
それに対して、俺はつよがってしまう。
「いや、コウスケはどうなんかなって思っただけだから。まぁお前はどこ行っても上手く生きていけそうだよな(笑)」
俺はそう言って笑った。
でも今度のコウスケはふざけてなかった。
「なぁ、キスしてええか?」
言うと同時にコウスケの顔が近づいてきた。
俺はそのままキスされた。
それは一瞬だった。
コウスケはすぐにもとに戻って言った。
「大丈夫やって。今はこうやっておるやろ?ジュンキと一緒に」
コウスケは優しげに微笑んで、俺の頭を撫でた。
そしてリンゴを擦り始めた。
俺は少ししてから我に返った。
「リンゴでまずくなったら、責任とれよ!」
俺はガキのように扱われたのが恥ずかしく感じて、またつよがった。