皆さん本当にごめんなさい。皆さんのレスは時間があれば拝見していましたが、書くまでの時間がなくて今まで放置状態でした。こんなにも多くの方が待っていてくれたのだと思うと申し訳なくて、本当にすみません。まずは登場人物だれかとのエッチシーンまでは必ず書かせていただきますので、そこのところはご安心ください。(まだあの人とは決まったわけじゃあないですからね)それにしても俺の文章はなぜこうも長くなるのでしょうか・・・。だから書く時間もないのです。失礼、前置きが長くなってしまいました。続きをどうぞ。
俺と鈴奈が付き合い始めて一週間と少しが経った。俺たちが付き合い始めたことは本当に瞬く間に広がり、ついには隼人の耳にまで届いた。そんな折の朝の通学の時だった。
俺がいつものようにいつもの電車に乗ると、隼人もいつものように俺の最寄り駅で他のお客さんに、今まで自分が座っていた席を譲ると、俺と一緒になって立ってくれる。いつものように隼人が話題を振ってくれて、俺がそれに答える。何も変わらない毎朝の光景だった。・・・・・・ほんの2、3日前までは。
原因はすべて俺にあった。初めての彼女に有頂天になっていた俺は、優先順位を何にも増して彼女に傾けていた。今まで頑張っていた部活や授業よりも、クラスメイトや友達よりも、そして、隼人よりも彼女を先にとった。そのときは他のことなど微塵も考えなかったのだ。俺は、『こう』と思えば横を見ずに突き進む性格がある・・・・・・それで何回も後から後悔するはめになるのだが、もうこのときからすでに、その前兆は現れていたのだ。
俺は今までなら隼人の言葉だけに耳を傾けていた。隼人の会話はもちろん楽しかったし、隼人も俺との会話は楽しいと彼は口に出して言ってくれるからとても嬉しかった。だけど、今は違った。片手には常に携帯を握りしめ、メールが届いたらそっちに集中して隼人の言葉は聞き流していた。それでよく話がかみ合わないことも多かった。もちろんメールの相手は彼女だった。彼女とは朝起きたときからメールの交換が始まる。『おはよう』からはじまって、『今日はいい天気だね』『雨が降ってるね』とか他愛もないメールを延々としていたのだ。そんなことを隼人の前でしだしてからすでに3日が経過していた。そして、ようやく隼人の耳にも入ったようで、3日目の話題はそれだった。
「そう言えば翼、吹奏楽部の彼女できたんだって?」
俺は携帯に視線を落としながら答えた。
「えっ?ああ、うん」
「そうなんだ・・・・・・ねえ、どんな子?可愛い子?」
「・・・・・・えっ?ああ、そうだね、俺的には、かな」
「そっか・・・・・・よかったじゃん」
「うん、まあね」
「もしかしてそのメールも彼女?」
「・・・・・・え?ああ、そうだよ」
「そっか・・・・・・」
そこで会話は途切れてしまった。ここ3日、こうやって会話に間が空くようになった。今まで隼人との会話に間が空くことなんて珍しかったのに。それもそうだ。一方が話す気マンマンでも、もう片一方がメールに集中しているんじゃ、やっぱり気が引けて遠慮してしまうものだ。そんなことにも気づかないくらい、俺は彼女ひとすじになっていた。その後も学校に着くまで隼人は幾度となく俺との会話を盛り上げようと話題を振ってくれたけど、隼人との会話が身に入らない俺は、ことごとく話の腰を折ってしまっていた。そして学校に着いて隼人とは別れた。
その日の昼休み。休み時間に入ってすぐに隼人が俺の教室に顔を出した。教室の外から大きな声で俺の名前を呼んだ。俺は教室を出て隼人の元へ言った。
「ねえ今日一緒にご飯食べない?」
隼人からご飯のお誘いだった。俺はそれを聞いて困った顔をした。
「ごめん、昼ごはんは彼女と食べるって約束してるんだ・・・・・・明日!明日一緒に食べようよ!彼女にも伝えとくから」
隼人はぱっと明るい顔で笑った。
「そっか、ごめんな急に言って。わかった。じゃあ、明日な」
「うん」
そう返事をすると、隼人は自分の教室へ帰っていった。
それとすれ違うかたちで鈴奈が現れた。俺は弁当を取りに一度教室へ戻ると、すぐさま彼女と屋上へ向かった。前にも言ったように、北館の屋上は常に封鎖されているが、南館の屋上は開け放たれ、結構多くの人が友達や、俺たち同じような恋人同士で昼食をとっていた。俺たちもそこにまぎれて昼食をとるのだ。
鈴奈との会話は楽しい。鈴奈は本当にお嬢様のように純粋でやさしい女の子だった。だから鈴奈とする会話は気を使わないといけない。あんまり汚い話や下ネタとかは受け付けない感じがしたのだ。友人でもこういう風に話す内容を考えないといけないことが多々ある。そういえば、隼人と会話をするときはそんなことを一度も考えなかったなとぼんやり思うことがあった。まあ、隼人がいつも話題を振ってくれるからってのもあったのかも知れなかったが、それにしても隼人との会話はすらすらと言葉が出てくるようだった。
次の日。その日の朝も変わらず昨日と同じような感じだった。問題は昼休みだった。昼休みのチャイムが鳴って少ししてからまた隼人が教室に顔を出した。俺は教室に出て隼人の対応をした。
「今日はどうしたの?」
「今日はどうしたのって・・・・・・昨日約束しただろ?」
俺はその隼人の言葉に首をかしげた。そして思い起こしてやっと気づいた。そう、今日は一緒に昼食を食べようと隼人と約束をしていたのだ。すっかり忘れていた俺は、当然彼女に今日は一緒に食べられないということわりを入れておくのも忘れていた。俺は顔の前に両手を合わせて平謝りした。
「ごめん!忘れてた!・・・・・・今度!また今度一緒に食べようぜ」
「えっ・・・・・・しょーがないなあ、じゃあまた今度ね」
隼人は笑いながら許してくれた。今思えば声を詰まらせた一瞬、悲しいような寂しいような目をしていたと思うのは気のせいだろうか。
俺は隼人のフォローも入れることなく言った。
「じゃあ、俺、行かなきゃ。また今度ね」
「おう」
隼人は軽く手を振って帰っていった。俺は弁当を持ってまた彼女と食べることにした。
そう言えばこんなこともあった。朝の登校中の事、隼人が言った。
「ねえ翼、今日練習早く終わるんだ。よかったら一緒に帰ろうよ」
俺は少しの間考えた。今日は部活以外特に何もないし、心配なかった。
「いいよ。でも俺終わるの8時くらいだと思うよ?」
「ちょっとくらいなら待つよ。じゃあ今日は一緒に帰ろうな」
「りょーかい」
そうやって朝約束をしたはずだった。でも・・・・・・
授業が終わって部活が始まった。いつもと変わらない練習をして、いつもとだいたい同じ時間に終わった。時計を見れば7時45分だった。体育館の中から野球部の練習を見ている限り、7時に練習は終わっていた。さすがに待っていないだろうなとちょっと残念に思って、制服に着替えて体育館を出てみると、体育館前の階段に座った隼人の姿があった。そのときはさすがに驚いた。
「隼人・・・・・・」
俺があまりの驚きように隼人の名前を口ずさむと、それに気づいて隼人が振り返った。
「おう、お疲れ!練習大変そうだったな」
と、片手を挙げて純粋な笑顔で笑ってくれた。俺はその笑顔を見ると思わずほっとした気分になった。
「お前はバカか!野球部の練習、7時くらいに終わったんだろ?1時間も待ってたの!?」
「だって・・・・・・翼と約束したし・・・・・・」
俺は嬉しいため息がもれた。でもその嬉しさに気づかれるのが恥ずかしくて、わざと呆れた表情をしてわざとらしくため息を大きくした。それでも隼人は頭をかいて苦笑に近い笑みをこぼしていた。
俺たちは一緒に帰ることにした。校門を出てすぐ、携帯のバイブが動いた。携帯を見てみると、メールの着信を知らせていた。もちろん彼女からだ。内容はこうだった。
『部活お疲れさまです。今日も部活は大変でしたか?私も今部活が終わったんでメールしました。今日から新しいパートに入って・・・・・・』
という感じのメールだった。すると俺はあろうことか、隼人に謝ってこう告げた。
「ごめん、隼人、先帰ってて。ちょっと用事ができちゃって」
「・・・・・・用事?そっか、それは仕方ないな。うん、わかった。じゃあ、また明日な」
「おう、じゃあ、また明日」
そうして隼人と別れて、俺はもう一度学校へ戻った。
俺が彼女の件で学校へ戻ったのだと、隼人じゃなくてもだれもがわかっただろう。でも隼人は一度も怒ることなんかなくて、むしろ笑顔で手を振っていつも送り出してくれた。本当にその時の俺は頭がどうかしていたんじゃないかと思うくらい、残酷なことをいとも簡単にやってのけていたのだ。俺との約束のために1時間も暇をもてあまして待ってくれていた親友を、俺は約束をやぶって追い返してしまう。そこまで人の気持ちを考えられなくなるなんて、俺は大バカ者だった。隼人がこんな行為でどれほど傷ついただろうか、でもそれを俺には訴えずに、自分の内でためてぐっと痛みを堪えていたのだ。そのことに気づかされたのは、1、2週間先のことだった。
その一件から一夜経った次の日も、隼人に対する何も考えない行動は続いた。それでも隼人は昨日と変わらず朝の電車の中で話しかけてくれる。でもそんな毎日も長くは続かなかった。あの一件から3日ほど経った朝の電車での会話のことだった。隼人が言いにくそうに言った。
「なあ翼? 俺、明日から一週間、部活の朝練の時間が30分早くなってさ、この電車に乗れないんだ。」
俺は性懲りもなく携帯に視線を落としたまま答えた。
「ふーん、そうなんだ」
「だから明日から一週間、一緒に通えないや」
「そっか、りょーかい」
今思えばなんて素っ気無い返事だったのだろうかと思う。それを言った時の隼人の顔も見てはいなかった。
さらに、もしかして明日から一週間、朝練の時間が30分早くなるというのは嘘だったのかもしれない。俺に都合よく言えば、全然自分との会話に集中してくれない俺を見たくはない、という意図だったのか、悪くいえば愛想を尽かされたのか、そのどちらかが理由でそんな口実をつくったのかもしれなかった。でもそれも俺がただ思っただけで、真実はわからなかった。なぜなら、今でもこの時のことはきいていないからである。