「宏之ーっ。おるんやろ」
ゆうた先生が真っ暗にしていた部室の電気をつけて入ってきた。さっきまで上気していた顔は、いつものスーパージャニ系のカッコカワイイ感じに戻っている。僕はなぜかすごく恥ずかしくて、そしてなぜかすごく罪悪感が湧いて、なかなか先生と目を合わせられなかった。
「宏之、ごめんな。あんなとこ見せてしまって。まさかお前が屋根裏にいるなんて。驚いたやろな。ほんま、すまん。15歳には刺激が強すぎたよな」。
僕はどう返事したらいいのか分からなかった。でも先生を安心させたかった。膝を抱えて下を向きながら、なんとか会話をしようと頑張ってみた。
「ううん、ゆうた先生。全然大丈夫だよ。それに柴内先生と何をしていたかなんて、何も覚えていないよ。僕、あそこで寝てただけだから」。
先生はそれには何も答えず、そっと僕の頭をなでた。そして隣に座ると僕の肩を抱いた。
「ありがとな。お前、いいやつだな」。
こんなに先生と接近したのは初めてだった。石鹸のにおいが心地いい。幸せだ。あんなエロい姿も見られたし、先生にとって僕はちょっと特別な存在になった訳だもんね。
「ゆうた先生、僕、本当に何も知らない。今まで通りの先生でいてね」。
先生は僕を抱きしめてくれた。たとえ先生にとって「いい子」だったからそうされたとしても、僕は十分満足していた。先生を困らせたくない。それだけ。僕はそっとゆうた先生の腰に手を回した。そして頭を先生の腕にもたれさせた。
「小テスト、作らなきゃいけないんじゃないの?」
「ううん。あれは口実。宏之に見られているのに、ゆっくりもできんやろ」。
ゆうた先生はにこっと笑った。先生は僕が男に興味があること、気づいているみたいだ。それから問わず語りに、こっちの世界のことをいろいろと教えてくれた。ぜいたくな個人授業。日本史の先生なんだけど、ゆうた先生の自分史もさらけ出してくれた。いわゆるゲイ歴ってやつだ。僕は興味津津で話の続きを待った。