春風いつもご覧いただきありがとうございます。
俺はいつも前半は間延びさせ、後半怒涛に畳み掛ける書き方なんですが、前振りは嫌なんですが、次の回(W話)はかなり急展開で、描いてて辛くて泣けましたでは、V話どうぞ笑
愛斗「待たせたな」
光一「市ノ瀬くん、ここ座って」
愛斗「サンキュー。
伸之、久しぶり」
俺「お久」
光一「急にごめんね」
愛斗「問題ねぇ。それよか来たばっかなんだけど、場所変えようか。結構ここにいるんしょ?」
結構どころじゃない、と喉まで出かかったが、言ってもしょうがないので、飲み込んだ。
俺達はマックを出て、愛斗の行きつけのBARに向かった。
そのBARの入口には、天然木の重厚感のある扉が造り付けられて、ビビったけど、中に入って二度びっくりさせられた。
黒×白の佇まい。
全てデザイナーズインテリアで統一されていた。
俺にはその価値がまるっきり理解できないが、高級だという事は解る。
店の真ん中にグランドピアノが置いてあって、誰か彼れか演奏している。
BGMはジャズやクラシックで、場違いじゃないかと思えてきた。
とりあえず、飲み物は愛斗に任せ、乾杯した。
俺「いつもこんなオシャレな店にくるの?緊張するんだけど」
愛斗「緊張って。そんな緊張するような店じゃないから」
光一「カッコイイね。大人っぽい」
愛斗「ガチャガチャした居酒屋とかだと、ゆっくり話しできないじゃん。ここだと落ち着けると思って」
光一「センスいいよ☆市ノ瀬君って、普段何してる人なの?」
うん、光一の目が星になっている。俺の時とは大違いだ。
愛斗「俺?俺は一応音楽してる」
俺「歌手とか?」
愛斗「歌手じゃないな笑。専門はヴァイオリン、あとチェロを少々。
だけど、本職は指揮。ドイツとか日本のマエストロ、音楽監督とかしてる」
光一「マジで?超カッコイイんだけど」
俺も正直、カッコイイと思った。
愛斗「実際は、光一や伸之が想像してる様な華やかな世界じゃないから。
芸人と一緒で、それで食べていける人なんて、ほんのわずか。
俺だって、人にたまたま巡まれて、やっとこさ食べれる程度なんだ」
光一「そうなんだ。英語ぺらぺらなの?」
愛斗「留学してから英語とドイツ語がしゃべれる様になった。それまでは全然だったけど」
光一「市ノ瀬くん、まじカッコイイね。今度、指揮してるところ見せて」
愛斗「演奏会有るから、来るといい。」
光一「絶対行く!」
愛斗「伸之は何系の仕事してるの?」
俺「俺はJTC(旅行代理店)に勤めてるよ」
愛斗「大手じゃん。凄いな」俺「愛斗の方が数段すごいから」
愛斗「伸之の父さんは何してる人?」
俺「会社の社長?役員?してるみたい」
愛斗「なるほどねぇ」
光一「愛斗くんの家族ってどんな感じ?」
愛斗「そうだな、親父が弁護士してて、お袋が主婦だろ。兄が法科大学院に通ってるなぁ」
俺「エリート一家なんだね」愛斗「そこそこお金もあって、俺も昔から、坊ちゃんって周りから呼ばれて。
それがすごく嫌で、反抗したり、悪い奴と付き合ったりしたんだけど、それにも飽きて気が付いたら、音楽にどっぷりハマッてた。
あぁ、俺の道これなんだって思えた。
そっから、フロリダに音楽留学して、日本に戻って青学に入って、法律学んで。やっぱドイツに留学して。結構、親からはウザがられてると思う。
にぃやんには感謝してるなぁ。俺は好きな様にやらしてもらえてるから」
愛斗に会った時、雰囲気のある人だと思ったのは、きっとこんなバックボーンがあるからに相違ない。
俺達は小一時間ほどしゃべって帰る事になった。
会計の時に、愛斗が懐からマネークリップに挟めているお金を抜き出した。
細かい所にまでおしゃれに気を使っている事が垣間見れた。
俺は、光一が愛斗と二人になりたそうな雰囲気を漂わせていた為、店を出た後に、電話がかかってきた風に装い、小走りで立ち去った。
この後は終電もないから、愛斗の家に泊まるだろう。光一の為には良かったと思う。
愛斗も今、好きな人がいないから、結ばれるかも知れない。
お互い幸せになれるなら、俺もうれしい、、はずだった。
だけど、俺に残されていた感情は、光一には愛斗をとられたくないという、嫌な奴が持ってるセルフィシュな独占欲だった。