暗い校舎中に静けさが漂っている。光と言えば、遠くにぼうっと浮かぶ教員室だけだ。どの教室も闇・・・
俺の居る部室棟にももう人気はない。聞こえるのは俺の息の音だけだ。
・・聞こえる
カシャ カシャ カシャ
テニスコートと部室棟を結ぶ細い道に敷かれた砂利を踏む、細い足音が聞こえる。自信なさげな、軽い足音。
俺の呼吸はもうとてつもなく荒くて。心臓は恐ろしい速さで打ち、外にまで音が聞こえそうな気がして、俺は必死に息を飲む。
・・目が闇に慣れてきた・・俺は、ロッカーの影の暗闇にそっと身を隠す。
カシャ カシャ カシャ
ずずっつ、という音と一緒に部室のドアが開いた。
青い闇の中に、黒いタイキのシルエット。。影はドアを閉め、一歩一歩俺のほうへ近づいてくる・・
タイキの茶色い髪が見える。闇の中に白い肌が浮かび上がっている。
甘い、汗の香りがここまで匂う。。
「タイキ?」
「はぁっ」と息を飲む声を出してびくっとタイキがのけぞった。顔が驚きで引きつっている」
「俺だよ」
「・・・・あ・・・・た、たけ」
声を出させるまもなく、空気が静から動へ一気に変わった。
俺は小柄なタイキを前から乱暴につかむと、そのまま体操マットの上に押し倒した。