買った酒は大きいコンビニの袋6個分にもなった。
優がさっと何も言わずに4個持ってくれる。
見た目もさることながら、こういう小まめな気配りができる優しい性格が何より好きなのだ。
冷房の効いた涼しいコンビニから、自動ドアを抜けると夏特有の湿気を含んだ生ぬるい風が体を包んで、またジンワリと汗をかく。
夏の匂いと風。コンビニの駐車場には同じ年くらいの大学生がTシャツ姿で騒いでいる。同じ大学の生徒だろう、コンビ二で買った花火を車に積んでいた。
「優、4つも持って重くない?1個持とうか?そしたら3個ずつになるし。」
気を使って俺が尋ねると
「バーカ、部活で鍛えてるから大丈夫だよこんくらい。
啓祐の家まで、ここから何分くらい?」
少し酔いが冷めた優がおどけて袋をバーベルのように持ち上げながら笑って見せた。
7月の終り。空を見上げると黒い空には雲一つなく、月と星明るく道を照らしている。
中学から野球部だと言う彼の鍛えられた上腕の筋肉が、童顔な顔とは不釣合いに盛り上がり、うっすらと血管が浮いている。
またその量が芸術的に美しい。全体とのバランスが絶妙だった。
「さすがー、凄い筋肉(笑)あと5分くらいだよ。」
俺もからかうように笑った。
本当に優といると不思議となんだか心が落ち着く。
まだ酔ってるせいか足元が若干危ない優を支えるため、肩が触れそうなくらいすぐ横を歩いて帰った。
マンションについてエレベーターで3階まで上がってるとき、酒と優の香水の良い香りがした。爽やかなウットリ寄りかかってしまいたくなる香り。
優も俺の香水の匂いに気付いたのか。
優「啓祐って何の香水使ってるの?なんか甘い匂いがする。」
俺「サム…えっ?それは秘密。」
慌てて答える。
少し前の授業中に優に聞いたことがあった。
「優って、どこの香水使ってるの?」
「アランドロンのサムライって香水。
結構つけてる人多いよ。」
それでドンキホーテでサムライの香水買ってつけてみたけど、なんか違うんだよね。
あの香りはサムライと優のフェロモンみたいな匂いが混ざった幸せの香りなんだ。
そのとき近くにサムライウーマンっていう香水があってさ、試香料でかいだら凄い甘い匂いがして、ずっとそれつけてるわけ。
優が侍から、俺はくノ一みたいな?
俺ウケよりだしね。重症でしょ?
だからサムライウーマンつけてるって言ったら引かれる気がして言えないわけ。
そんなことを考えてたらあっという間に3階について。
部屋の鍵を開けて入った。
「散らかってるけど、どうぞ」
「おじゃましまーす」