宗太さんと出会ってから一ヶ月がたったある日
ユウト、今度の日曜日ハイキング行かない?
なんでハイキングなの?海は?
いきなり宗太さんはそんなことを書いた手帳を見せてきた
僕は手話で返した。
やっぱ夏といえば海!!宗太さんの水着みたいし!!
見せたいものがあるから!
なに?
行ってからのお楽しみ
そう書いた・・・
ニコっと笑った顔はとても無邪気で思わず僕はうんと返事してしまった
駅に到着し宗太さんは仕事へいく
僕はいつものように見送った
そのとき横からひそひそ話が聞こえた
「今の人たち手話してたよね?」
「耳聞こえない人たちなのかね?でもさっきの男の人カッコよかったよね。もったいないね」
こんな話が聞こえてきた
凄くズキっときた
悪気はない話なんだろうけど・・・
そんなに耳が聞こえないことが珍しいことかな?
みんなが言葉を使って話をするように手話を使って話してるだけなのに。
だから宗太さんはあまり手話を使わずにメモ書きするのかな?
周りの目を気にしてるのかな?
そんな疑問が残るなか日曜日がきた
二人で電車に乗り近くの山へ向かう
そんな標高は高くないけど歩くだけの距離はあった
日ごろから運動してないからか、もうゼーハー息切れ(笑)
宗太さんは歩き慣れてるのかぜんぜん疲れた様子を見せない
ユウト、体力ないんだね
手話で僕に伝えた
ちょっと休憩しよ
OK
ベンチに座る
森を見つめる宗太さんの横顔は凄くイケメンだった。
そういえば、前言ってた見せたいものって?
行ってからのお楽しみ
なんじゃそりゃあ(笑)
結局教えてくれないまま、また歩き出した
疲れたというより、足が痛くなった。
無理に歩いたせいか靴づれしていた
靴づれしてるじゃん、痛い?
いや大丈夫
ほら、乗れ
え?おんぶしてくれるの?
うん
宗太さんは屈んで僕をおんぶしてくれた
この年になっておんぶしてもらうとは!!ちょっと恥ずかしい
おんぶしてもらって、よくわかったのは宗太さんの広い背中
本当カッコイイな!!
僕は思わず
「宗太さん、大好き」
そう言った
でも宗太さんには聞こえない
言葉じゃあ届かない想いがある
だから ギュっと僕は抱きしめた
そしてとうとう頂上についた
この頂上から見る町の景色は凄く綺麗だった
雲もない青空で 川がキラキラ輝いてた
凄く綺麗だった・・・
山頂は誰もいなくてベンチがちょうどいいところにあった
もしかして見せたかったのってこの景色?
うん、気に入った?
うん!!
ユウト、だいぶ手話うまくなったね。
授業中も手話の本読んでるからね。いっぱい宗太さんと話したいから
・・・
宗太さんは凄く照れた表情を見せた
その表情は凄く可愛くて僕は思わず宗太さんのほっぺにキスした
僕ね宗太さんが好きだから
ごめん、口の動き読み取れなかった
好き
何度も「好き」っていう手話をした
一番初めに覚えた「好き」
一番言いたかったこの言葉
こんな俺でもいいの?
宗太さんじゃなきゃ嫌だから
ベンチの上で僕たちはキスをした
このキスは僕の中で忘れられないキスになった