感想を頂きましてありがとうございました!
この回、布石とするために、またまた超長編となってしまいました。
区切り良くするため、ご理解ください。
続き
霧斗「よ!遅かったじゃん^^」
玄関を開けた霧斗は、ちょっと弱ってはいたけど笑顔は相変わらず。
俺「ゴメンゴメン。はいこれ。俺からの見舞いってことでな。」
霧斗「お〜、3つも!サンキュ!^^」
霧斗は、俺が何を知ってしまったかなんて気づくわけもなく、頼まれてた数より1個多いオレンジを渡すと、子供みたいに喜んでた。
俺「オレンジむいてやるよ。」
霧斗「そんなん自分で出来るし。^^」
俺「いいから。今日は休んでろ。」
***
霧斗「すっげー!ここまでむいちゃうのか!(@0@)」
消化に良いようにと、俺がさやまで綺麗にむいた果肉だけのオレンジを見て目を丸くしている。
俺「食いやすいだろ?^^」
霧斗「メッチャすごいやんけ!」
俺「お前地元大阪じゃないだろ・・・^^;」
霧斗「ええやないかぁ^0^」
上手くも下手でもないエセ関西弁で喜んでる霧斗。
でも・・・明るい親友を見ても素直に明るくなれない自分がいる。どうしても・・・あの事が脳裏をよぎるんだ。
そんな悔しさにも似た苦しさを、俺はひた隠しにしてる。でも・・・その限界も近い様な気もする。
俺「つか体調どうなん?^^」
霧斗「昨日よりかはマシって感じかな。」
俺「明日も一応休めよ。明後日週末だし。」
霧斗「そーすっかな。」
丁寧にむいたオレンジを旨そうに口に運んでる。
霧斗「つーかさ、さっきから気になってんだけどよ。」
俺「え・・・?何が?」
霧斗「何か嫌な事あったろ。」
ドキッとした。心が見抜かれてる。
俺「んなことねえよ。」
霧斗「嘘つくなって。」
俺「何で嘘だって言えんだよ。」
霧斗「嫌なことがあった時お前、ずっと手をグーパーするの知ってんだぜ。」
俺「・・・!」
無意識の癖。確かにこれは親にも言われたことがあった。
思わず目を逸らす。
霧斗「何があったんだよ。」
優しさまじりのキリっとした眼で俺の表情を窺ってる。
もう意味がないのにひた隠そうとしてる俺。
もうバレバレなのに目を合わせようとしない俺。
ぶっちゃけるべきか、何か他の事ではぐらかすか。
ウソにウソを重ねてウソを突き通す・・・それだけはしたくないんだ・・・。
でも・・・正直にワケを話したら、きいちゃん・・・どんな反応するんだろうか・・・。
無言のまま俺を見つめる霧斗。
黙ってても全て読心されてる気分がして来る。
気持ちが悪い・・・動悸も感じる・・・。
もう・・・隠しきれない・・・!
俺「今日・・・な・・・学食で・・・バッタリ会ったんだ・・・。」
だから俺、もう隠しきれずに話すことにしたんだ。むしろ話さざるを得なかったんだ。
霧斗「会ったって・・・誰に?」
俺「ユキちゃんだよ・・・。」
場の空気が凍る。霧斗も予想してなかったんだろう。
霧斗「お前・・・聞いたんか・・・?」
か細くも低い声。霧斗の焦りぶりがくみ取れた。
霧斗にとっては、あの理由を一番知ってほしくなかった相手が、今それを知ってしまったという事実。
俺だけじゃなく、霧斗の楽観的な感情を何よりも揺さぶっている。
気まずい・・・。
俺「俺のせいだったって・・・マジショックだし・・・!」
霧斗「それはちげーよ!」
弱り気味の体に鞭打って、急に声を大きくする霧斗に少しビクッとした。いつもの優しい声じゃない、力強い声。
霧斗「俺はユキも大切に思ってたけどお前もメチャクチャ大切な親友なんだぞ!俺がいつゆうと会っていつユキと会うなんて俺の自由だろ!」
俺「でもそれで別れたんだろ・・・!」
霧斗「ん?!」
俺「俺もきいちゃんと飲んだりすんのメチャ楽しいけど!でも・・・そのせいでユキちゃんは寂しがってたんじゃねえのかよ!」
俺はいきり立って声を荒げた。こうやってお互いに声を荒げるなんて今まで一度たりとも無かった。
俺も怒るつもりなんてなかったのに、苦しかったんだ。苦しさが張り詰めて破裂して・・・。
霧斗「じゃあお前と会うなって言われて、はいわかりましたって言えば良かったのか!?」
俺「え・・・?!」
霧斗「あいつお前か私を選べって言ってきたんだぞ!そんなん選べるわけないだろー!!」
衝撃的な事実だった。霧斗は究極の選択を迫られてたんだ・・・。
霧斗「ユキにあんな事聞かれて・・・俺すげー辛かったんだ・・・。選べるわけねーだろ・・・!」
俺「そう・・・か・・・」
霧斗「選べないなら別れるって言われたんだ・・・だから別れた。だからお前のせいなんかじゃねえんだ・・・。」
俺はその瞬間、体の力が一気に抜けて、心の苦しみが一気に解かれた。
足元がフワっとなって、ベッドにドスンと落ちる様に座る。
安心・・・?解放・・・?
何だろう・・・得体の知れない感情が込み上げてくるんだ。
涙が出てくる・・・。安堵の涙・・・?
止まらないんだ・・・次々と出てきて止まらない。
体が震える・・・。何でだろう・・・。
霧斗「ゆう・・・泣くなよ・・・!」
きいちゃんが隣に腰掛けて、肩を抱いてくれてる。
優しいよ・・・優しすぎるよ・・・きいちゃん・・・
俺は声を上げて泣いた。嗚咽に近かったと思う。
俺「俺・・・!ずっと・・・!俺が・・・!別れさせた・・・!んだ・・・!って・・・!」
霧斗「もう言うな・・・何にも言うな・・・お前はなんも悪くねえんだぞ・・・な・・・」
俺「ゴメン・・・!ほん・・・!とに・・・!」
霧斗「良いんだ・・・。何にも心配すんな・・・。」
泣いて声にならない俺を、きいちゃんは優しくハグしてくれた。
あの日、きいちゃんが彼女持ちを辞めざるを得なかったあの日、俺がきいちゃんをハグして慰めた様に、今、きいちゃんは俺をハグして慰めてくれてる。
きいちゃんの柔らかな温もりが直に伝わってくるんだ。
あ〜・・・優しさに包まれてる・・・きいちゃん・・・俺お前の事が好きなんだ・・・。
お前のそんな優しい心が好きで好きでたまんないんだ・・・。
2人が出会って初めての喧嘩の後、スコールの様に涙が降り続けて、霧斗の肩を濡らし続けて、俺は泣き続けた。
***
その日、初めての大ゲンカをして、初めての泣き顔を見せて、改めて絆の強さを実感して、改めて霧斗への恋愛感情を実感した。
霧斗「俺しばらく彼女作んない!^0^」
俺「何でだよ?」
霧斗「もうあんなゴタゴタゴメンだよ〜^^;」
俺「とかいって、冬休み明けたら彼女紹介されそうだな(笑)」
霧斗「え〜・・・そうなっちまう系〜?」
俺「お前次第だって^^」
結局冬休みが終わっても、年度末に近づいても霧斗はずっと彼女を作らずに、暇さえあれば互いの家で飲んだり、他の友人と一緒にふざけあったり、2人でカラオケにも行っ
たりしてた。試験前の時期には喫茶店で勉強しまくって、霧斗が唯一苦手な英語を俺が丁寧に教え、英語以外なかなか苦手な俺に飽きずに教えてくれる。
春休み。1週間ずつ互いの実家に泊まりあい、互いの家族に紹介しあい、互いの地元を自慢しあった。
霧斗の家族はホントに温かみがあり、俺の家族も霧斗を大歓迎してくれた。
喜びをかみしめていく毎日。
そして、俺たちは留年なく、無事に3回生を迎えた。同時に、霧斗と親友になって丸2年になった。
この3回生となった1年、俺と霧斗の関係に、テロ並みの衝撃が走る事になるなんて、その日まで分からぬまま・・・。
続きます。