後ろにはあのお見合い相手の西山加奈子さんが立っていた
「おひさしぶりです。この間はどうも」
彼女は頭をペコっと下げた
「どうも」
俺も頭を下げた
スーツ姿の彼女は凄く出来るOLみたいだった。スタイルもいいし,絶対男からモテるだろう的な感じの女。
「この間メールしたんですけど,見ていただけましたか?」
ん??メール?
俺はいっさいそんなメール貰ってないから驚いた
「あの今度の土曜日にご一緒にテニスでもと思いまして」
こんな子が俺のことを気にいってくれてるのかな?
俺なんかよりいっぱい男は寄ってくるはずだが・・・
「すいません。メール見ない派なんで(笑)今度の土曜日ですか・・・」
俺はナオキの顔が一番に浮かんだ・・・
そしておばさんの顔も浮かんだ
やっぱり叔母さんにはいい報告したいし・・・
「大丈夫ですよ」
俺はどうしようもなくそんな返事をしてしまった
「本当ですか?じゃあまたメールしますね。それでは」
会釈して帰っていく彼女
そして後ろから肩を叩かれた
「よっ!お疲れ!」
ナオキ・・・
「今の女の人ってもしかして彼女?」
「馬鹿ちげぇよ」
「ふ〜ん」
ナオキは俺の肩に手をまわし飲み屋に連れて行った
そこでは奥さんの愚痴ばっかりだった
「ナオキもう別れる気なんか?」
「でもまだガキが小さいからなぁ〜」
「別れたら駄目だよ。」
俺は諭すようにナオキの肩を叩いた
「もう別れてケンジと暮らしたいな」
ボソっと彼がつぶやいた
え?
「男同士で暮らせるかよ」
俺は内心嬉しかった
そのときメールがきた
あのお見合い相手
’今度の土曜日の11ぐらいに迎いに行きますので○○駅で待っててもらえますか?’’
「さっきの女?」
ナオキがケータイを覗き込んできた
「まぁ〜・・・」
ナオキは笑いながら言った
「お前俺のこと好きなのにその子が可哀想だな」
はぁ〜?
何言ってるんだこいつ
「その子と付き合うんか?」
「まだ分からねぇよ」
「結婚はいいけど,好きでもないのに結婚したら絶対うまくいかないって。お前ノンケのふりするためにその子と結婚する気なんだろ?」
ズキ・・・
ゲイだってバレないように俺はこの子と付き合う気なんだ・・・
叔母さんにも悪いし・・・
だからこの子と付き合う気でいたんだ・・・
本心をナオキに言われて俺はカチンときた
ガタン!!
「うっせぇな!!俺だって嫌だけどしょうがねぇだろ!!叔母さんが紹介してくれた人なんだから!断れるわけねぇだろ!!」
俺はそのまま飲み屋を出ていった
一人で飲み屋街を歩いているとなんかさびしくなってきた
俺って何してんだろ・・・
好きでもない女と今度の土曜日にテニスだなんて・・・
馬鹿だ・・・
でも断れない
そんな優柔不断な自分にも腹立つし・・
わかってて俺に言ってきたナオキにも腹が立った
俺が普通に女が好きだったらこんなことなかったのに・・・
なんで男を好きになってしまったんだろう・・・
死んでしまいたい・・・
すべてが嫌になった