マサトが俺と同じ店で働くようになって一週間が経った。
マサトはお客にも中々気に入られ一週間にも関わらず結構指名を伸ばしてた。その間、俺に話しかけようとしたりしてたけど、俺の方が意識的に避けてたら、話しかけようとするそぶりも見せなくなった。
日曜日。俺は体調を壊してた。店は店休日。薬箱なんかない。主食のカップメンもないし買いにいく体力はない。
しかもその日は凄く寒くなり、布団に入っても体の奮えが全然おさまらなかった。
(俺…まじ、死ぬかも…)
本気でそう思った。でも思う度、怖くなった。
(人生楽しくなかったのにやっぱ死ぬのは怖いのかな)
寒くてなのか怖くてなのかわかんないけど奮えがとまらなかった。そんな時だった……。
トントン………
玄関のドアのノック音。瞬間浮かんだのは、金融会社の人かなってこと。俺の家を訪ねてくんのはそれくらいしかない。
居留守を使おうと思ったけど、それも後で面倒臭くなるので仕方なく出た。
「はい……」
「あ」
そこに居たのは、マサトだった。散々避けてたのに、ナゼか安心した気分になった自分に戸惑った。
「何?」
「いや、鍋作ったんですけど、一人鍋も微妙なんで…って、ヒカルさんなんかきつそうですよ?体調悪いんじゃ…」
「何でもない」
「何でもないことないでしょう!部屋めっちゃ寒いし…てか、なんでそんな薄着なんですか!?」
「暖房ないし…服もない……」
なんかもう、No.1のプライドとか、どうでもよかった。
「俺の部屋来て下さい。こんな寒い中寝てたらマジ死にますよ!?」
「いい…」
何でこんな嫌がってたのかよくわかんないけど、とにかくワガママ言ってたのを覚えてる。
多分今思うと、優しさに甘えた自分がダメになってしまうような…立ち上がれなくなると感じてたんだと思う。
これからも、一人で生きていかなきゃいけないのに、人に甘えてたらどんどんダメになってしまう、って…。
そんな駄々をこねる俺にマサトがキレた。無理矢理肩を掴んで俺を自分の部屋に連れて行くマサト。抵抗しようと思っても力が全然入んなかった。