「えと…」
『ごめん。俺、したことなくて。』
「おお俺もないけど、なんで」
『健太の度胸と、好きになってくれたお礼かな。』&ニッコリ
「ありがとう。嫌やなことさせてごめん。」
『嫌やないよ。ってかさぁ、健ちゃんこれはないわ。』
と指されたのは股間。
『そのさきも、なんかないからな。』
期待したことは、あっけなく打ち砕かれた。
二人の初キッスは、甘酸っぱいでなく、グレープの味だった。
夏休みも、部活の合間を縫い何日か遊び、秋が過ぎ冬が来た。
体育祭と文化祭も手伝って、優史とは親友と呼べるくらい仲が良かった。
僕は週に一度は部活が終わるまで待ち、優史の家へ帰った。この日は丁度金曜だった。
『今日泊まっていきや。』
「明日は?部活ちゃうん。」
『昼からやし、ちょっとさ。』
「訳ありか。しゃないな。」
初めておじちゃんの顔を見て、おじちゃん似なんやなって思った。さわやか加減が凄く似てる。
風呂はもちろん別々に入って、ジャージだけ借りて、家からしばらく出てるって言う兄貴さんの部屋でゲームしてた。
一段落してゲームを変えようとゲームを漁る僕。
『なぁ、キス勃起。』
(たまにからかうときに呼ばれるようになった)
「どした?」
手を止めて振り向く僕。
『ちょっと俺の部屋いい?』
二人で優史の部屋に戻る。寝るにはちょっと早い11時。
「静かやな。」
『とぉさんら出掛けたからな。』
らしい。部屋に戻ったら、やっぱり何にもない空間。優史はいつも通りあんまり喋らないし、僕は優史がどうしたいのか分からなかった。
「ちょっと時間くれ。」
なにするんか分かんなかったけど、とにかく時間がほしいと言うからには、待つしかなく、黒いシーツのベッドに腰かけた。
しばらくしたら、隣にこしかけてきた。
そして、
何の前触れもなく、
再び
おたがいのくちびるがふれた。