「もっと激しくしてッ」
「もうイッちゃうッ」
「いいよ!きて!」
「イクッ!イクッ!」
セックスしたあとはいつも憂鬱だ。
「久し振りだったからケツいてぇ・・・」
帰り道で一人ぼやく。
誰かに抱かれることには慣れていた。
いろいろなプレイもしてきた。
沢山の言葉を聞かされた。
それでも、俺は誰とも付き合ったことは無かった。
誰も好きになれなかった。
昔から普通の付き合いが苦手だった。
父親に小3から性的虐待を受けていた俺の身体は、すっかり男を受け入れる器になっていた。
抱かれること以外に、本当に必要としてもらう術を知らなかった。
いつも俺を殴っていた父は、俺を抱いてるときだけ「愛してる」「お前が必要だ」と優しくしてくれた。
中学入学前に、母親と父親が離婚(もともと別居状態だったが)。
父に引き取られ、俺は犯され続けた。
売られることには慣れていた。
小5の頃からいけないことだと気付いていた。
でも、必要とされたくて俺は我慢した。
皆が俺を必要としてくれた。
縛られたって、叩かれたって、どんな痛いことされたって、どんな恥ずかしいことをされたって、俺は耐えた。
中学校では苦労した。
母親がいないことを頻繁に聞かれた。
ある日、知らない先生に呼ばれた。
顔を見たとき、知ってることに気付いた。
俺を買ったことのある人だった。
学校で抱かれ、家でも抱かれ。
休みの日は売られる。
そんな日々。
いつしか当たり前になった。
人との付き合い方もわかった。
高校は寮がある県立の高校に行った。
父親から離れたかった。
でも、友達だけじゃ足りなくなった。
もっと必要として欲しい。
だから、俺は身体を売った。
自ら売った。
ある日。
「卓哉、昨日何してたの?」
「遊んでた」
「ホテルで?」
「!!」
見られてた。
しかも同じクラスの同じ部屋の奴に。
「夜に聞かせて。困ってることとかあるなら話して」
夜。
「父親がこっちまできてたからさ」
「家に帰ったらいいじゃん。それほど遠くないんだし」
「なんでだろうね。親父バカだからさ」
「お父さん何歳?」
「50だけど」
「へぇ。見た目若いね。20代後半から30代前半かと思った」
「・・・どこから見たの?」
「向かいのビル。てか、外であんなことしちゃいけないし、カーテン閉めなきゃ丸見えだよ」
「嘘・・・」
「お金に困ってたの?」
「違う・・・」
「じゃあ付き合ってるの?男と?」
「違う・・・」
「じゃあ何で?」
「言えない・・・」
「そか」
「え・・・」
拍子抜け。
もっと聞かれると思った。
「言えないなら聞かないよ。言いたくないんだろうし」
「お前・・・」
「ねぇ卓哉」
「なんだ?」
「俺は卓也のこと、軽蔑してねぇからな」
「・・・」
「男としてようが、俺の友達の卓哉だし。一緒にいたいから」
「ありがと。てかなんだよそれ。告白かなんかか?」
「変な意味じゃなくてさ。俺はお前のことが好きで、お前が必要なだけだ」
「・・・バカじゃね」
心を見透かされてるみたいだった。
恥ずかしくて、ツラくて俺はすぐに寝た。