「ゴメン…なさぃ…」
いきなり泣き出す翔也。
「なんで泣くんだよ。翔也は悪いことしてないから、な?だから泣くなって」
久しぶりに見た翔也の泣き顔。
中学生になってから叩かれても泣かなくなったのに。
「なんで泣くんだよ」
理由が分からず困る。
「兄ちゃん…兄ちゃん…」
抱きついてくる翔也。
細くて小さい。
たぶん普通の中2より小さいんじゃないだろうか。
股の間に入って来てるから、翔也のが腹に密着してる。
「僕…僕…うぅ…」
嗚咽を漏らしながら泣く。
優しく頭を撫で、背中をポンポンと叩いてやる。
まるで子供をあやすようだ。
「兄ちゃん…」
「なんだ?」
「僕…兄ちゃんが…」
「うん」
「兄ちゃんが…好き…」
「翔也…」
「だからヤなの。ワガママだって分かってるけど、兄ちゃんが誰かといるのが嫌なのッ」
掠れた声で、震えながら話した翔也。
「こんな弟でゴメンなさい…。気持ち悪くてゴメンなさい…」
弟を苦しめていたのが自分だったということが嫌だった。
「兄ちゃんのためなら何だってするから…だから嫌いにならないで…」
無性に腹が立った。
弟が苦しんでいるのが嫌だった。
「翔也…泣くな」
「兄ちゃん…」
「なんでもしてくれるんだろ?だから、まずは泣き止め」
今、弟を笑わせられるのは俺しかいない。