嶺に相談されて、自分が三原にメールした日から一週間たったくらいだったと思う。
その一週間はとくに嶺とも三原のことは話題にあがらなかったけれど、オレは進展があったのかどうか少し気にかかってた。でも、『三原からも嶺からも話をふってこない限り自分から話題にだすのはなー』って気がひけたから聞けずにもいた。
そんなこんなで、なにもなく一週間がたったくらいの帰り道だった。
オレはいつもどおり嶺とみんなとで帰ってた。相変わらず嶺と三原のことは特に話題にあがらなかった。
で、いつもどおり部員がみんな降りてオレと嶺の二人になった。
嶺「オレ考えたんだけど」
そう切り出された。それだけでなんの話かはわかった。
オレ「三原のこと?」
嶺「うん」
嶺は少し間をおいた。オレは嶺が口を開くのを黙ってまってた。
嶺「オレ三原と別れたい……と思うんだけど」
オレ「うん」
その瞬間なんか自分の中で拍子抜けした感じだった。
嶺と三原のこと受け入れてこうと思って、きっとそのことで悩むんだろうなって思ってたから。
だから本音をいえば、自分の願ってもない方向になった。
でももちろん、嶺の前だからとか関係なしにそんなのおくびにも出しちゃいけないし、そんなことを喜ぶなんて人として最低だって分かってた。だから、余計無意識に無感情に淡々と嶺の話その時は聞けたんだと思う。
オレ「そっか…『別れよう』って言うの?」
嶺「わかんない」
嶺はホントに困ってる顔してた。
オレ「でも別れたいんでしょ?」
嶺「うん…だって今のままだらだら続いても付き合ってるって言わないし、だからってなんかしたいとか思わないけど…別れない方がいいかな?」
そんなことオレに聞かれても…
『いや、別れろよ』それが本心に決まってる。けど、それはオレの都合であってそんな私情ははさんじゃいけない。オレは一言一言言うのにすごい考えたと思う。なるべく客観視するように
オレ「好きじゃないなら別れればいいんじゃないかな?」
でも結局、当たり障りなく別れる方向に言っちゃった…
きっと相談してきた相手が嶺じゃなかったら、オレは違う言い方したと思う。
きっと
『好きじゃないなら別れればいいと思うけど、ちょっとでも好きなら別れない方がいいんじゃないかな。まだ付き合い始めたばっかだし、今は微妙かもだけど、実際に両想いではじまるカップルなんてあんまいないよ?告られた側なんだからなおさらだよ。だからもうちょっと様子みれば?』
そう言ったと思う。他の友達なら。けど、オレはずるかった。自分の気持ちは確かに全面にださなかったけれど、親友としてなら客観的な意見を言うべきで、『別れる』のと『別れない』のとどっちの可能性も残した言い方するべきだったのに
なのに、自分から『別れない』って選択肢に少しでも嶺がなびく可能性をつくりだしたくなくて…でも自分は中立な発言をしたと思いたくて、姑息な助言をした。
嶺はオレを親友だと思って、嶺のことを1番に考えた助言をすると思って相談してきたのに…オレはそんな嶺に対して…自分のことしか考えてない助言を結局しちゃった。
嶺「そうだよね…別れるべきだよね…けど、なんて言えばいいかな?」
オレの言ったことが嶺を後押ししたのかな。完全に『別れる』のを前提にした話になった。
けど、まだできた。もう一度、嶺自身だけで別れるか別れないかを考えるようにするようには。
けど、オレはまた姑息にもその芽を摘んだ
オレ「うーん、もちろん直接言うんだよね?」
嶺の気持ちが別れるほうに傾いている。その流れを絶対に変えたくない。少なくとも自分の手でだけはやだった。
だから、オレからの言葉には『別れない』って選択肢をはさまなかった。
嶺に別れることを畳みかけるように。
でも決して『別れた方がいい』とは一回も言わずに。
ホントにずるかった。ずるくて自分勝手だった。
結局、嶺は直接言うのは戸惑ってたみたいで、メールにしたいってしきりに言ってたけどオレは純粋に、別れをメールで伝えるのはよくないって思うから、「直接のが絶対いいよ」って何回も言った。
でも嶺は躊躇してる…話は堂々めぐりになった。
オレの降りる駅で嶺も降りて二人でホームでしばらく話した。
そして
オレ「わかった。じゃあ、とりあえずオレが三原の様子みてみてどうした方がいいか考えるよ、それから決めよ。今日だけじゃもう話進まねぇし〜」
嶺「うん、頼むわ…ホントありがと」
オレの申し出でこの日はとりあえずは『別れる』ための話が一段落ついた。
『ありがと』…そんな言葉かけられる価値オレなんかにないのに…
嶺はホントにほっとしたような顔をこっちに向けて言ってた。
自惚れとかじゃなくて、心底オレを信頼して安心しきった顔…
でも、嶺…オレの最後の申し出…協力…結局は全部自分のためなんだよ…嶺と三原のことを監視できるようにするためでしかなかったんだよ
また、嶺の傾いた気持ちが変わらないように
また、付き合うって気が起きないように
全部可能性の芽を摘むために…オレの行動は全部結局自分のためだけだったんだよ…
結局オレはいつもそうやって全部自分のため。自分のことしか考えてこなかった。
嶺のためになんて結局したことなかった。
嶺…お前はそんなオレを何回許してきた?
オレそれを思うと、お前にしたこと悔やんでも悔やみきれないよ…
コメントありがとうございます!!まだ読んでくれてる人がいてホント嬉しいです。
なるべく早く更新すんでよろしくお願いします。