夏の夜。鈴虫が鳴き声と川の流れる音が聞こえる。風が俺の髪を撫でて、音も無く過ぎさっていく。
悠介「ゴメン!待たせてしもて…」
淳士「いいよ。もう遅いのに…わざわざありがとうな。」
悠介「お礼なんかいいからさ〜早く乗ってよ〜」
淳士「はいはい(笑)」
そう言うと俺は自転車の後ろに乗る。肩に手を置いて、立ったままでいると
悠介「座れば?せっかく荷台のあるチャリにしたのに…あと、俺の腰の辺り持ってな?」
淳士「ゴメンゴメン;こんな気遣いまでありがとう。」
そして言われたまま後ろに座って、腰に手をまわす。悠介の背中は暖かくて、思ってたよりずっと広かった。
悠介「下り坂あるからギュッてしててくれる?心配やから;」
そう言うと俺の手を掴んで自分のヘソ辺りに持ってくる。
悠介「これやったら落ちへんやろ?じゃあ行くで〜」
俺は内心ドキドキのまま、静かに頷いた。夜の風は少し冷たくて、俺は少し見を震わせた。
悠介「淳士、寒い?俺の背中に引っ付くと暖かいよ。」
と言ったと思うと片手でギュッと引き寄せられた。確かに暖かい…けど
淳士「アカンって;危ないよ;それに男同士でこんなんしてたら変やろ?」
俺は男に興味はあったけど、踏み出せない状態だったので、ちょっと拒否反応を示した。
悠介「じゃあ淳士がギュッてしてくれやな危ない運転続けよっかな〜」
と両手を離したまま、下り坂を走り始めた。
淳士「アカンって!」
そう言って悠介の身体をギュッと抱きしめた。すると俺は気付いた。悠介の鼓動が早くなってる。悠介は顔を赤くしつつも無言のまま安全運転を続ける。俺は顔までピタッと背中につけて、この幸せな時間を過ごした。
悠介「……あのさ、ちょっと暑いんだけど(笑)」
淳士「えっ…あ…ゴメン;ちょっとやり過ぎたな(笑)」
悠介「………淳士やったら別にいいよ」
淳士「ん?なんて言ったん?」
悠介「なんも言ってないよ。独り言やから気にせんといて〜。ほら、もうすぐ駅やで」
確かに駅の光が見えてきた。でも俺はそれどころじゃ無くて、真っ赤な自分の顔をどう隠そうか焦っていた。キュッという音と共に自転車は駅の改札口の前に着いた。
悠介「今日はありがとう!また勉強教えてな?次会えるのはいつかな…まあまたメールする!」
淳士「うん!こちらこそありがとう!また連絡してな〜」
そうして俺は改札口をくぐった。少し振り返ると悠介が手を振ってるのが見えたから、振り返して帰路についた。