「じゃ。」
苦笑の表情のままそう言って去ってくヒデアキさん。俺は振り返り見ることも無く、タバコをくわえたまま、ヒデアキさんに聴こえるように言った。
『やっぱ缶コーヒー飲みたい。』
数秒後、ヒデアキさんはニコニコしながら缶コーヒを俺の前に差し出した。
「飲む?」
『いただきます。』
俺は缶コーヒを受け取り、飲んだ。飲みながらヒデアキさんに聞いた。
『何で俺を話相手に選んだんすか?』
「この辺の人じゃないと思ったから。見舞いの人とか来てるの見たこと無いし。」
『名前と言い見舞い客と言い、俺の病室張ってるんすか?』
「そんなんじゃないんだけど、父さん511に入院してるから病室の前通るし、4人部屋でこの前までじいさん一人入ってただけで、すぐらいじの名前気付いた。それに、救急車で運ばれてきたとき俺ここでタバコ吸ってて、らいじの顔も髪型も覚えてたから。」
『で、俺に話掛けたんすか?』
「そう。この辺の人じゃなさそうだし、俺と同じく話相手いないだろうなって思って。」
『確かに転勤して間もないし、知り合いいませんからね。でも最初は馴れ馴れしい人だと思って、話するの嫌でした。』
ヒデアキさんはまた苦笑して頭を掻いた。