部長の荒い息が遠ざかっていきましたが、またすぐに戻ってくるでしょう。俺は消火器を抱えて部長の近くへ行き、机の下に隠れてスタンバイしました。
「くそ…どこにいるんだ…殺してやる…」
カッターを持った部長がすぐそこにいて、俺は死にそうなぐらいビビっていました。
「殺してやる…」
そして部長が俺に背を向けた瞬間、俺は立ち上がって消火器で部長の頭を殴りつけました。わぁっと叫びながら部長が倒れ、気絶したようですが、あまりに非現実的な現実に言葉も出ませんでした。
「う、うぉ――!!!」
突然声が聞こえ、俺は驚きのあまり腰を抜かしました。その声は浅田の叫びであり、かなりの悲哀がこもった叫びに聞こえました。
部長は全裸にして資料室に閉じ込めておきました。資料室は中からは鍵を開閉できません。そして鍵の管理者は部長なので、部長のデスクを探せば鍵はすぐに見つかりました。
浅田は服を着る気力もないといった感じで、ソファに座らせてとりあえずその辺にあった毛布をかけておきました。
「なぁ、浅田」
「谷中さん」
浅田が俺の言葉を遮りました。
「俺、別に部長のこと好きじゃないんだ。ただ、谷中さんを脅してるのを止めようと思って。谷中さんのために何かできないかなと思って」
俺は黙って聞いていました。
「もう会社やめようと思う」
「は?」
「昨日谷中さんにセクハラしたの……部長と俺の2人なんだ」
つづく