コメントありがたいです。
また遅くなってごめんなさい。
続きです。
雨は弱まることなく降り続けていました。
窓を流れ落ちる雨を眺めていると、マサキがすぐ隣にやってきました。
「止みそうもねえなぁ…」
わずかに腕と腕が触れ合います。
「うん」
僕はドキッとしたけど、窓の外を見続けてました。
「ほら、半分こ」
「え?」
マサキは綺麗に半分食べかけたサクランボを僕の方に差し出しました。
「なに?」
「5コをふたりで割ったら、2コ半だろ?」
マサキが真面目な顔して言うので笑いそうになりました。
「いいよ、食べちゃいなよ」
「いや、こういうのはちゃんとしないと気持ちワルいから」
マサキがぐいとサクランボを押し出してきて、仕方なく僕は受け取りました。
「変なところで律儀だよな」
「そうだよ。俺は律儀なんだよ」
マサキは偉そうに言ってニコッと笑いました。
僕はどうしようかと半分欠けたサクランボを眺めました。
「で、わざわざ半分にしてくれたんだ?」
「そうだよ、ちゃんと半分だろ?」
感心するほどサクランボは見事に半分で、その努力を思うと僕は笑えてきました。
「律儀だなー」
マサキの食べかけを食べるのは照れくさかったんですが、マサキに悪いなと思えて、僕は半分のサクランボを頬張りました。
僕の食べるのを見ていたマサキは、またニコッと嬉しそうに笑いました。
「ケイだけだよ、俺が律儀な男だって分かってくれるのは。みんな俺のこと、いい加減で軽いヤツと思ってるんだもんなぁ…」
みんなの評価は正しいと思いましたけど、マサキは不満そうで、ぶつぶつ文句を言いました。
「知ってる? 俺、ヤリチンってことになってんの。笑っちゃうよ、童貞なのに」
と僕の脇腹を軽くパンチしてきました。
「八つ当たり禁止」
マサキの口からヤリチンとか童貞って言葉を聞くと、僕はどうしてもマサキのあそこを思い出してドキドキしてしまいました。
「ウワサだと俺、今、女子大生と付き合ってるらしいよ」
マサキはへらへら笑っていましたが、すごく寂しそうな顔をしました。
確かにマサキがヤリチンって茶化されてるのは見たことがありました。
それでもマサキはケラケラ笑って軽く否定するくらいでしたから、そんなに嫌だったなんて思いませんでした。
「マサキはいいカッコしいだからな。嫌ならちゃんと怒んなきゃだめだよ」
と僕が言うと、マサキは難しい顔して口を尖らせました。
「だって俺、ケイみたいに人のこと怒るの得意じゃないもん」
「ケンカ売ってる? 僕だって別に得意じゃないんだけど」
僕はそんな風に思われていたのかとちょっとショックでした。
僕が怒るというか叱るのはマサキにだけで、他の人に対してはちゃんと距離を保って、優しく接しているつもりだったんです。
「いやいや、ケイの怒り方は素晴らしいよ。なんて言うか、ケイに怒られると胸がすーっとするんだよな。よく怒られてる俺が言うんだから間違いないよ」
マサキはとても誇らしげでした。
僕は、そんな風に言われてもちっとも嬉しくありませんでしたけど。
「まあ、マサキは怒られる方が得意だもんな」
「そうなんだよ。だから困ってるんだよ」
マサキはまた口を尖らせました。
「なにを困ってるって?」
僕は小憎らしくて、その尖らせた唇を指で摘んでやりました。