いつもすいません、遅くなりました。
続きです。
僕はゆっくり身体を起こすと、マサキを見ました。
マサキは入口から恨めしそうな顔で僕を見ながら、お尻を擦っています。
「こっち来い」
僕は種を手のひらに吐き出して、マサキに微笑みかけました。
「怒んないから、おいで」
マサキは恐る恐る近くまでやってきました。
よっぽど痛かったみたいで、まだお尻を擦っていました。
「ここ、座りな」
僕はなるべく優しく言いながら目の前の畳を指します。
「ごめん…」
マサキは言われたままに畳に正座して、捨てられた子犬みたいな顔で僕を見てきました。
そんな顔で見るなよと僕は思いました。
「…また調子乗り過ぎちった」
「どうして普通に出来ないかな。普通に持ってきてさ、普通に食べさせてくれたらいいのに」
僕は嘆息を吐きました。
「あ、どうぞ」
マサキはサクランボの入ったパックを僕の方に押して勧めてきました。
「あ、ありがと」
僕はサクランボに手を伸ばします。
「…美味しい?」
「うん」
「それ、ホントは俺の食後のデザートだったんだけどさ、ケイに全部あげるよ」
「うん、ありがと」
僕はもう1つ頬張ります。
「…それ、美味しいだろ?」
「うん、うまいね」
「な。少しずつ食べようと思ってさ、とっておいたんだ」
「そうなんだ」
ホントに美味しくて僕は手が止まりませんでした。
「ホントそれ、うまいよな。高いやつみたいだよ」
「分かった。もう、分かったから。マサキも食べなよ」
僕は笑ってしまいます。
「え、いいの?」
マサキは上目遣いで僕の顔を覗いてきます。
マサキの顔には、ありありと食べたいって書いてあるのが見て分かりました。
「だって、食べたいんだろ?」
「うん…いや、でもケイにあげたから」
「いいよ。早くしないと全部一人で食べちゃうぞ。マサキも食べな」
僕はまた1つ手を伸ばしました。
「あ、そう? じゃあ…」
マサキはいっぺんに4つも5つも掴むと、正座を崩してあぐらをかいて、美味しそうに1つ頬張りました。
「うん、やっぱコレうまいわ」
マサキはホントに惚れ惚れするくらいの会心の笑顔をみせました。
僕もそれを見て、自然と笑みが零れました。