その日はたまたまひとりで残業をしていました。朝まで休みなしにやったとしても間に合いそうにありませんでしたが、やるしかない。そういうわけで、俺はパソコンと向かい合い、ひとり寂しくキーボードを叩いていました。
「よっ、谷中くん」
暗いオフィスの中、突然声がしたので、俺は驚いて椅子から落ちそうになりました。
「ぶ、部長……」
俺はまだ動揺していましたが、声の主が部長と知って、ホッと胸をなで下ろしました。
あ、ちなみに谷中というのは僕の名前です。「たになか」ではなく「やなか」と読みます。
「はい、コーヒー」
部長が差し出したマグカップを会釈しながら受け取りました。コーヒーのいい匂いが漂いました。
「ありがとうございます」
「うん。……どう?朝までには終わりそう?」
「終わりそうにないです」
俺が答えると、部長は困ったような顔をしました。
俺は一口、熱い熱いコーヒーをすすりました。
「困ったな……。ごめんね、谷中くんの仕事じゃないのに、後処理させてしまって。やっぱ若いのはダメだわ。やっぱり谷中くんしか頼れる人いないや」
「は、はぁ……」
その時、ガクンと世界が揺れました。落としそうになったマグカップを慌ててデスクに置きました。
「そろそろ効いてきたかな?」
「……?」
突然の眠気が襲ってきて、俺は喋れないほどでした。
「谷中くん、今年で40になるんだよね?」
俺は頷きました。
「独身でしょ?」
俺はまた頷きました。
「溜まってるよね?」
「……?」
「俺が抜いてあげる」
部長が近付いてきて、俺の股間をまさぐりまし――
つづく