熱い
熱い
お前の熱が
伝わってくる
いきなり引き止められて焦った
握られた腕が熱い
「なんだよ?どうした?終電なくなるって」
笑顔で言えたと思う
でもお前は真剣な顔
「なんで、何も言わないんですか?俺にいいたいことがあったんじゃないんですか?」
「……一言、謝りたかった…かな…お前を追い詰めたのは俺だし…」
「違う!」
怒鳴り声に、驚いた
初めて聞いた
何で、そんな顔をする?
何でお前がそんなに泣きそうなんだ?
お前は幸せなんだろう?
「コウスケさん、あっちに立って」
訳もわからずお前が言う場所に立った
部屋の端
お前は、2、3回深呼吸して
立ち上がった
「…っ………」
周りにある家具に捕まりながら
凄くたどたどしくて震えている
腕で支えながら
一歩、また一歩って歩いて来るお前に
近寄って抱きしめたい気持ちを必死で抑えた
「っ…ぁ!」
倒れ込んだお前をぎりぎりのところで支えた
息を整えながら笑顔で俺を見るお前
「感覚が、あるんです。事故の後は全くなかったのに。痛みとか疲れを感じるんです」
医者は、もう歩くことは無理だと言った
神経麻痺
感覚自体なく、自分でトイレの規制をすることすら出来ない、と
実際、人が手伝わないと体を起こすことすら出来なかったのに
「どうして?」
「わからない、ただ…俺が……飛び降りて、目が覚めて……トイレをしたいっていう感覚があったんです、医者も驚いてました」
信じられなかった
今はもう座ることも出来るし
トイレに行くことも出来るし
捕まりながらであれば体を支えることも出来るのだと
「よかった…本当に…よかった……」
涙を抑えることが
出来なかった
本当によかったって
心から思った