俺たちは無言で走るだけ。
ただお互いの呼吸を隣で感じて、同じペースで並んで走る。
コウスケが野球で夜も練習してるから、夜8時からのランニングは早朝6時にすることになっていた。
最近は毎晩のように練習で疲れたコウスケが俺の家に泊まって帰るから、俺たちは共に朝を迎えて、そのままランニングに入る、というかたちが続いている。
やる夜もあれば、ただ寝るだけの夜もある。
どっちにしろ、1つのベットに男2人が寝るのは少々不都合ではあるが、俺は満足している。
ランニングコースは山の中腹にある神社まで。
この前コウスケと見つけた場所で、そこからの眺めが気に入って、俺らはここ最近ずっとこのコースだ。まだ気温が低く、かすみがかった街を見渡せる。
「そろそろここも飽きてきたな。ほれ、コウスケ」
俺は神社の横にある自販機で缶コーヒー2本買い、街を眺めているコウスケに渡した。
「おお、サンキュウ。そうか?俺はずっとこのコースでもええけどな」
俺はコウスケの横に腰を下ろし、コウスケと同じように眺めに浸ってみる。
「青春やな。山から眺める朝の街並み。手元には缶コーヒー。隣には、ジュンキや」
横でコウスケが言った。たまにコウスケはこういう臭いセリフを言う(笑)
そして俺に同意を求めるように、俺の肩に腕をのっけてくるのだ。
「青春…まぁ、確かにいい眺めだよな。俺らのどっちかが女だったら、完璧なのにな」
俺は冗談で言ってみた。俺たちは女を好きになれない。
そんなことはわかっているのに、最近たまに俺は不安になることがある。
「なんやジュンキ?痛いところ突くなや(笑)まぁ俺はジュンキを女やと思って接しとるけどな。愛しとるぞ(笑)」
笑いながらコウスケはそう言って、俺の肩に乗せた手を俺の頬に移してきた。
その指が優しくなでるから、くすぐったい。
「はいはい。くすぐったいから(笑)」
俺はその手を掴み、コウスケと向かい合った。
「なぁ。青春って時期過ぎたら、俺らただのオッサンになるんだよな」
オッサンになれば、こんなこといつまでもできないだろう。
「さあな。そんなことより、ここでキスしたら、完璧や思わん?恋愛青春ストーリー(笑)」
おなじみの白い歯を見せて、コウスケは俺の肩を両手でつかむ。
「お前は結局そこに行き着くのかよ(笑)今のセリフも臭すぎ(笑)」
そんなことを言いつつ、俺は周りに誰もいないか見渡して、目をとじる。
俺の体はグッと抱き寄せられ、温かいものを唇に感じた。
こんな時、俺は不安になる。
青春っていつまでも続かないだろ?