さほど大きくない部屋に俺と基晴の息遣いの音だけが響いている。
目を上げると、ユニフォームはいつのまにか脱げていて、基晴の腹の上には飛び散った基晴の精液があった。
それは、紅色の夕日の光によって、まるで世界に一つしかない大切な宝石のように輝いていた。
世界で唯一の宝石を優しく扱うように舐め取った。
小さな吐息が聞こえた。先程まで荒々しかった息は少し落ち着いたようだった。
基晴の顔が見える所まで這い上がり、基晴を抱き締めた。もう抵抗はしなかった。
俺のユニフォーム越しに基晴の暖かな体温と鼓動が伝わってきた。
俺はアーモンドのような形をした綺麗なその瞳を見つめた。
「好きだ。男なんて考えられないと思うけど、基晴のことがどうしようもなく好きだ…」
自分の掠れた声が遠くできこえていた。
長い沈黙の時が流れた。息をするのすら憚られるほどだった。
だけど、決して目を逸らさなかった。
時間にすると1分も経っていないのだろうけど、俺にとってこの1分は今までの人生で一番長い1分だった。
「優さん、俺も、その、優さんのことが好きでした……今日それを伝えようと思ってたんです」
我が耳を疑った。幻聴だろうか。
「……は?マジで言ってんの?!お前泣いてたじゃん」
そう言葉は出たものの頭がうまく回らない。ただでさえ弱い頭なのに、壊れたらどうしてくれるのだろう。
「だって、いきなりあんなことするから……びっくりして」
それってつまりOKてことなのか?今俺は素直に喜んでいいのか?
口から出たのはとても滑稽な一言だった。
「な、なんで?」
「なんでって……優しいし、いつも一生懸命にバスケしてる姿がかっこいいし、、、」
『いや、優しいのはお前だからだし、部活頑張るのはお前がいるからだぜ?そこんとこわかってんのかな、こいつ』と内心思ったが、俺は自身の唇を桜貝のような基晴の唇に優しくキスをした。
時間が止まればいいのに!と本当に思った。
そう思うのが遅かったのか、いつのまにか部屋に差し込む光が陰ってきている。
17時くらいだろうか?すりガラスの上に窓が小さくて外がよく見えない。
まだセンコーはいるだろう。センコーが帰った後に学校から出るとなると、警報がなることになる。別にそれくらいいいのだが、後々メンドイことになると厄介だ。
しかし、せっかく2人きりなのに、そう簡単にこの時間を手放したくない。
「今日うちに泊まるか?」
いきなり基晴が泊まったとしても俺の両親は夜中まで仕事で帰ってこない人だから、まぁ気を使う必要もない。
基晴はすごく嬉しそうに頷いて答えた。
「なら急いで学校出るぞ、じゃねぇと閉まっちまう」
急いでコートから荷物を取ってきて、テッシュで基晴を綺麗にしようとした。
基晴は当然のように恥ずかしがったけれど、無理矢理押さえ付けて拭いてやった。
床も一通り綺麗にし、俺らは服を整え、重いドアを開けて玄関へと駆け出した。
俺の一世一代の告白は運よく成功した。
もしかしたらこの時だけ神様の機嫌がよかったのかもしれない。
まぁ、俺は神様なんて存在は信じちゃいないけども。