嬉しそうな顔をして壮介が階段を1段1段よじ登ってくる。
いつもながらその純粋な笑顔を見ながら後ろめたい気持ちで一杯になる。
ごめんな、壮介。俺はお前としたくてどうしようもないんだ…。
お前が思ってるような尊敬できる先輩じゃないんだよ…。
「お邪魔します!」
「せっかく寝かかってたのにぃ…。お前、明日もあるから早く寝ろよ?」
「はい、勿論ですよ。先輩の横だったら2秒で寝れますよ!」
「わっ、やっぱりここで寝る気、満々だな?」
「えへへ。」
僕は安全の為に、壮介に背を向けるようにして横になっていた。
「先輩?どうしたんですか!?もう寝るんですか!?」
「う〜ん。もう疲れたし、眠いからねぇ…。」
「えー、詰まんないですよぉ。もう少しお話しましょうよぉ。」
そりゃ、話したいよ?でも今そっちを向いたら、俺はもう自制できる自信は無かった。
「先輩〜先輩〜!!」
後ろで壮介がギャーギャー騒ぎ出した。
すると、次の瞬間壮介が僕の脇腹をくすぐってきた。
その時、頭の中が真っ白になった。
その瞬間のことは覚えていない。
気がつくと、僕は壮介のことを抱きしめていた。
シャンプーの香りで目まいを起こしそうになっていたことだけ、辛うじて覚えている。
壮介の体は、細くて温かくて僕の体にすっぽりと収まっていた。
壮介はというと、その場に固まっていた。
僕は何もかも終わったと思った。体中を冷や汗が流れた。
一瞬の内に、転校するところまで考えた。
すると、壮介の腕が僕の腰に回された。
ゆっくりと、だがしっかりと僕のことを抱き返してきた。
僕は一瞬何が起きたのか理解できなかった。
でも、僕たちはこうして抱き合っているのだ。
こうなることを望んで、僕はいくつの孤独な夜を過ごしてきたのだろう?
壮介の風呂上りのすべすべの肌と、シャンプーの香りで僕はどこか違う世界に飲み込まれていくような感覚がした。
深く、深く。どこまでも深く…。