ほしとを振り切った俺は逃げるように電車に乗って、横浜駅まで戻っていた。京急の下り快特に乗れば、最寄り駅まで30分でつけるが、まだ帰りたくはなかった。
駅を出ればすぐ近くにあるモアーズのタワレコでCDの群れを眺めていると、背後から誰かに肩をぽんと叩かれた。
「?」
「よっ」
そこには今は大学で講義を受けているはずのほしとがいた。
「ほしと?こんなとこで何してんの?」
「それ、俺の台詞ww」
そしてまぁいいからいいからと言ってはスタバに強制連行されてしまった。
「で?」
席に着くなりこちらを真剣な目で見る。どうやら逃げられそうもない。
「あ〜、俺今休学してんだ〜」
「いや、そうじゃなくて、お前何があった?」
答えづらい。やっぱり誤魔化そう。
「いや、何もないけど?」こう答えるとほしとはため息をつき、少し身を乗り出す。
「あのな、渋谷の交差点でぼ〜っとしながら赤信号渡ろうとしてる人間が何もないわけないだろ」
それはごもっとも。誤魔化しきれないか・・・
「ん〜、ここじゃちょっと・・・」
こんな人がたくさんいるとこでカミングアウトするほどの度胸はない。とりあえず、カラオケみたいな周囲を気にしなくて済む場所に移動しなくては。
「じゃ〜、俺ん家来るか?この前実家出たし」
予期せぬ提案だった。だが断る理由もなく、うなずくしかなかった。