その日俺はすぐに帰って、タオルは明日返せるように洗濯した。
1位にはなれなかったけど、コウスケと仲良くなれたと思うと、悪くない1日だったと思った。
そしてコウスケにもっと近づきたいとも思った。
次の日、移動教室が重なって、なかなかコウスケに会えなかった。
結局放課後まで持ち越してしまい、コウスケの部活が終わるのを待つことにした。
俺は受験のためにこの夏の大会で引退してたから、部活はせずに、陸上部の部室の前で野球部の練習を眺めてた。
コウスケは転校してきたばっかり、といってももう5ヶ月だっけ?とにかく転校生なのに、チームのまとめ役で、みんなから慕われてるのがよくわかった。
あの優しさは誰に対しても平等なのか。
と思って、自分の気持ちが焦るのを感じたが、それが普通なんだと自分に言い聞かした。
そんなことを考えながら遠くにいるコウスケの姿を眺めていると、コウスケと目が合った。
コウスケは昨日みたいに微笑んで、こっちへ走ってきた。
「お!じゅんき!タオルだよな?練習終わってからでいいか?あとちょいで終わるから。で、よかったら一緒に帰ろうや!」
そう言うとコウスケはチームメイトに呼ばれて、そっちのほうに走っていった。
俺はまたしてもコウスケのペースに呑まれていた。
一緒に帰ろうって、方向一緒なんか?俺電車だし。
とにかく待つしかないから、またコウスケの練習姿を眺めることにした。
30分後に練習は終わり、コウスケが着替えをすましてやってきた。
「お疲れ!これ、ありがと!ちゃんと洗濯したから」
俺はタオルを返した。
「おん!確かに。ジュンキの匂いや(笑)」
コウスケはタオルを嗅いで笑った。
「じゃ、帰ろうか!兄弟!」
そう言ってコウスケは腕を俺の肩にかけてきた。
シーブリーズの香りと汗が混ざったような匂いがする。
「おう!行こうぜ!弟!」
俺はコウスケのペースになんとか付いていくためにそう言った。
「俺、弟かよ!まぁええわ。ジュンキ、ノリよくなったな(笑)」
コウスケは嬉しそうに言った。
「コウスケって電車?俺電車なんだけど」
俺は『コウスケ』と呼ぶことにぎこちなさを感じながら言った。
「おん、電車。ていうか同じ駅でおりるし。俺けっこう電車でジュンキ見るで」
「マジで!?全然気付かんかった。じゃあ家はどの辺なん?」
「ツタヤの近く」
「嘘!?俺ん家もあの辺!ってもしかしてこのことも知っとった?」
「おう(笑)眠そうに登校しとるジュンキを何回か見たしな(笑)」
俺は全く知らなかった。コウスケと自分は全く縁のない者同士だと思っていたのに、家が近所だったとは。しかもけっこう見られてたなんて(笑)
「まぁ話は帰りながらしようで!」
コウスケはそう言って肩を組んだまま歩き出した。