コウスケは高2の始めに転校してきた。
初めてコウスケと話したのは高2の9月。
体育祭もいよいよクライマックス。
最後の競技「クラス対抗リレー」で俺は2年4組のアンカーを任された。
夏まで陸上部で走ってたから足には自信があったけど、体は少し鈍ってた。
気付いたらリレーはもう始まっていて、とうとう俺の番に回ってきた。
定位置に着いて周りを見渡すと、4組と6組が先頭を争っている。
「ええ勝負やな。まぁ勝つのは6組やけど」
隣からそう言われ、振り向くと6組のアンカーが俺の肩をポンと叩き、すぐに走る構えに入った。
俺は突然のことで、何も言えなかった。
そうしているうちに、4組のランナーが6組を抜き、先頭を維持したままこっちに走ってきた。
ついに俺にバトンが回り、俺は全速で先頭を維持したままゴール!
するはずだった。
「あー!先頭を走る4組が転倒!6組が抜きました!」
実況の声で俺は状況を把握した。
俺はあと半周というところでカーブで足を滑らし、こけてしまい、6組に抜かされたのだ。
最悪だ。
これで負けたらマジ情けねぇ!
俺はすぐに立ち上がり、さっき話し掛けてきた奴の背中を無我夢中で追いかけた。
距離は徐々に縮まってきた。でも奴も速い。
あと少しだった。
1位6組。2位4組という結果だった。
「ドンマイ!ジュンキ!気にするなって!」
クラスのやつらに励まされるのが苦になり、俺は閉会式には出ずに泥を落とすためにひとり洗い場に向かった。
走ってるときには気付かなかったが、俺の体は見るも無惨な状態だった。
頬や髪は砂で白くなり、右肘と左膝からは血が出ている。
情けねぇ。
「おい!4組のアンカー!」
あの声だ。振り返るとアイツが息を切らしながら近づいてきた。
「ええ勝負だったな!」
そう言って奴は手を差し出してきた。
握手?俺はゆっくりと手を出した。
奴の手がガッチリと俺の手を掴む。
「マジで焦ったよ。お前足速いんだな!抜かれるか思ったで」
奴はそう言うと白い歯を見せて手を放した。
これがコウスケとの出会いだった。