―――5月に入った
俺は孝紀が来てから、週に3回は部活に顔を出すようにしていた。
そんなある日―
「そろそろ先輩のアドレス聞いても良いですか?」
「俺のアドレス?
まぁ…良いけどさ…つかそろそろって何やねん(笑)」
「気にしたら負けですよ」
「はいはい;」
こんな感じでメールをし始めることになった。
その帰り、孝紀と駅で別れたあと、近くの本屋に行った。
雑誌を立ち読みしていると、不意に後ろから肩を叩かれた。
ビクッとして振り返ると、そこには悠介が居た。
「お久しぶりです。あ…俺のこと覚えてますか?」
一瞬、何が起きたのかわからず、ボケッとしてしまった。
そして、しばらくしてから今の状況を理解し、緊張感というか何というかわからないが、ドキドキが止まらなかった。
「あ…あぁ、覚えてるよ
悠介…君…だろう?」
「はい!まさか先輩と会うなんてビックリですよ」
「ホンマやな(笑)」
「先輩は…すぐに帰るんですか?」
「せやなあ…欲しいの買ったし、もう帰るかな〜」
「じゃあ途中まで一緒に帰りましょうよ」
「良いけど…時間大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「じゃあ帰ろっか」
こうして話をしながら歩いていると、いろいろわかってきた。
悠介は小学校から野球をしていて、高校でも続けていること。
高校は県内の有名校に通っていて、自転車通学だということ。
孝紀とは小学校からの友達で、家もすぐ近くだということ。
彼女はいないこと。
…など、たくさん話をした(ほぼこちらが一方的に話かけていただけだが;)
「先輩の家ってどの辺りなんですか?」
「意外と近いよ?
ほら、あそこにマンション見えるやろ?あこに住んでるねん」
「本当に近いですね(笑)
あっ、先輩…アドレス聞いても良いですか?」
「えっ…あ…良いよ。
あとで孝紀から聞いといてくれる?」
「わかりました。
じゃあ今日はここで失礼しますね。」
そう言うと、悠介は帰って行った。
家に帰ってからもあのドキドキが収まらなかった。