寒さに身を縮こめながら足早にホームへと向かう小さな背中…どこか懐かしさを感じる猫背気味の後ろ姿の持ち主は、そう紛れもなく君だった。
寒さも本格的になってきた某日、俺(モトキ27歳)は仕事の得意先回りの途中で思わぬ再会を果たした…
夏とともに去って行った、恋の相手(たかひろ21歳)と。
でも、声をきいたら、また想いが爆発してしまいそうだから、声はかけずにガマンした。
ホームについて、ほどなく電車が滑り込んできた。人混みに紛れて電車に乗り込み、俺はアイツの近くの席に座った。
電車が動きだし、すぐにアイツは居眠りを始めた。
そういえば、助手席に乗ってるときも良く居眠りしていたよなぁ〜なんて思いに耽りながらアイツをしばらく観察していた。
5分10分と経つにつれ居眠りも本格的になってきたのか、電車の揺れに合わせるかのようにコックリコックリして、なんか滑稽だった。
しかし勢い余ったのか、カブっていたキャップが落ちてしまった。俺と会うときもよくカブっていたトレードマークの黒いキャップ。
俺に衝撃が走ったのはこの後だった。