俺をさっさとレジからはずせばよかったんだよ。
だったらこんなことなかったのに!!
俺は逆切れしていた。
最悪なやつ
俺はイライラしながらも、だんだんと冷静になっていく。
バカなことしてしまったな。
とうとう切れてしまった。
なんて自分はバカなことをしたんだろう。
謝ろうかな?
自分の責任だし。
そのとき電話がかかってきた。
「もしもし?」
「ケンジか?」
多田店長だった。
「話たいことがあるけんさ、ファミレスに来て」
呼び出された。
怒られるだろうな。
それを覚悟で近くのファミレスに行った。
多田店長は怒ったら恐いらしい。
おれはビクビクしていた。
仕事を途中で投げ出したんだから・・・怒られて当然
中に入って店員さんに案内される。
そこには多田さんがスーツ姿でいた。
コーヒーを注文してくれていた。
多田さんは 俺の顔をジッと見る。
おれは思わず涙が出てしまった。
「もう俺には無理です。レジなんか出来ないし。辞めます」
しばらく沈黙が続いた。
「そんな小っちゃいミスでくじけてどうするん?ケンジあんなに頑張っとるじゃん。俺は君のこと認めとるよ。だから君をレジに回したんだよ」
そんな言葉にも涙が出てきた。
「あの小原さん(俺に嫌味を言う女)だって、一年前は何も出来んかったよ。クレームは一日5件出しよったし。本当にダメだったけど、今あんなに速く仕事しとるやろ?君が出来る子だってのがわかるから、怒るんよ。だから他の高校生とかの女の子には何も言わんじゃろ?」
そうだったんだ・・・
俺のことを思って言ってくれてたんだ。
俺はその言葉にまた涙した。
ファミレスで大の男が泣いてるから みんなびっくりしてみてる
「だから辞めるなんて言うなよ」
そう言って俺の頭をなでてくれた。
俺はますます多田さんのことが大好きになった。
一生ついていこうと思った。
「仕事を覚えようと思ったら、まず出来る人の真似をしんさい」
そうだったんだ。
俺はそれが出来ていなかったんだ。
人の技術をパクることもまた自分が上達するための近道だってことに気がついた