俺は人の秘密を知ってしまった。
それは決して誰にも言えない秘密。
北橋の身勝手な欲望から生じた悲しい出来事。
果たして俺はあの場でどうすればよかったんだろう??
止めに入るべきだった??
まぁ助けに入ったとして、北橋に格闘で勝てる自信なんて一つもないし逆に自分も襲われかねない。
拓真も北橋に犯されてるところを俺に見られたくないだろうし…。
でもそんなの言い訳でしかない。
恐怖で足がすみ、混乱してすべきことを判断できなかった。
それが本当のところ。
てか北橋の最後の言葉も気になるなぁ…今日のことを言わないようにオドシをかけていた感じだった。
何か弱味を握られていて、そのせいで拓真が逆らえなかったとしたら…。
ひどい話だ…
でも俺が何かして解決できる問題なんかではないし…
でもこのまま無視することも俺にはできない。
拓真はめっちゃ友達おもいのいいヤツだし、その友達である俺が何もしないわけにはいかない。
偽善とか、そんなんじゃなくて、本気で助けになりたいって思った。
でもそうするには拓真と話をしないと動くにも動けない…。
まぁ、ひとまず今日はもう遅いし家に帰らなきゃなぁ…
家族もきっと心配しているはず。
それにひどく疲れた…
俺は部室の建物の裏から離れ、裏門へと向かった。
裏門を飛び越え、チャリにのる。
あたりの民家の電気も消え始め、辺りはまっくら。
俺はまっすぐ家を目指しチャリをこいだ。
まっくらな道をひたすらこいだ。
財布をとりに学校に戻る。
始めはそれだけだった。
それだけだったはずなのに…
この夜のできごとがこれから起こるすべてのはじまり
そう、はじまりでしかなかったんだ。