季節はいつの間にか二月になっていた。
月曜日に青山君の通ってる大学に行く決意をした。
で、今は日曜日。とうとう明日だ。
もし大学で青山君を見つけてしまったらどうしよう。
何って話そうか。
なんてことを今真剣に考えてる。
「こら」
俺はハっとした。
玄武君が俺の頭をポンと叩いた。
玄武「何をボーっとしてんだよ(笑)なんか最近お前ボーっとしすぎじゃね?なんか悩みでもあんの?」
俺「いや、ないよ」
ここは老人ホームだ。そして今ボランティア真っ最中だっけ。よそ事考えてちゃいけないな。
俺は気持ちの切り替えをした。
そんな悩みなんか吹き飛ぶぐらい、楽しい時間。
おじいさん、おばあさんたちと囲碁したり、トランプしたり。
おじいさんおばあさんたちが本当に楽しそうにしてくれる。
5時になり、老人たちは送迎バスで帰っていった。
俺たちは見送りがすむと、帰ることになる。
それぞれみんな違う方面。
俺もバスの時間があるから、そそくさと帰る。
俺「お疲れさまでした」
みんな「お疲れ〜〜」
そのとき玄武君に
「あっ!!ケンジ、ちょっと待って」
俺は呼び止められた。
「ん?どうしたの?」
玄武「あっあのさ、今から時間あいてる?」
俺「え・・・うん」
玄武「ちょっと話しない?」
玄武君は真剣な顔していた。
もしかしてボランティア辞めるなんて言うんじゃないかな?
そんな心配をしていた。
ついて行ったところが、公園だった。
ベンチに座る。
なんだろう。
なんか言いたげな感じ。
玄武「あっあのさ、すーーーーっ(息をすう)」
なんか下を向きだした。
「ケンジは好きな人いる?」
俺はドキっとしてしまった。
好きな人・・・・・・・
玄武「お前は女と男どっちが好きなん?」
俺「え??・・・・・」
玄武「ごめん、単刀直入に言うわ。俺はお前のことが好きなんよ」
俺「・・・・」
なんかシーンとなった。
玄武君が俺のこと???
玄武君はノンケじゃないの?
玄武「おれは、今まで誰とも付き合ったことないし、人を好きになったこともないし、ましてや男とか全然興味なかったんだけど、出会ったあの日から俺はお前のことが頭から離れんようになってさ。キモイかもしれんけど、俺の気持ちだから」
俺「・・・」
玄武君からの突然の告白に戸惑った。
俺は告白なんかされたことなんてないし。
まさかノンケと思ってた人から告白されるなんて。
俺は思わず
「ごめん」
玄武君「そっか・・・他に好きな人?」
俺「うん。俺は玄武君のこと大好きだよ。でもそれ以上に大好きな人がいるんだ」
玄武「そっか」
俺「ごめんね」
玄武「ばーか!冗談だよ」
玄武君は笑顔で俺に笑いかけた。
玄武君は俺の頭に手をポンとのせて、
「ほら行くぞ」
俺は何ってバカなんだろ。
好きって言ってくれてる人がいるのに、嫌いだって言われた人を未だに好きだなんて。
俺って本当にバカだ。
俺と玄武君はバス停まで歩いた。
その間ずっと無言だった。
バス停に座る。
会話はない。
玄武君・・・
ごめん。
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
バスがくる。
いつもよりも早く来た。
玄武「じゃあな、また誘うから」
俺「うん。また誘って」
俺はバスの一番後ろの席に行く。
すると玄武君が笑顔でこっちを見ている。
俺は大きく手をふった。
そしたら玄武君も大きく笑顔で手をふってくれた。
バスが発進する。
玄武君がだんだんと小さくなる。
玄武君は手をふるのをやめた。
凄く悲しそうな顔をしていたのは俺の見間違いだろうか・・・・
玄武君のことが俺は大好きなはずなのに。
断ってしまった。あのまま俺も好きだって言えなかった。
やっぱり俺の一番は青山君だから。
自分にウソはつけない。
でも、玄武君のことが大好きなのは本当だ。
人のために何かするってことが、とても楽しいってこと。
ありがとうって感謝されることが、嬉しいってこと。
いろいろと玄武君に教えてもらったんだ。
青山君にふられて絶望的だった俺を救ってくれた。
凄く玄武君には感謝してる。
あのまま玄武君と出会わなければ俺はもうこの世にはいなかったかもしれない。
大学だって真面目に行ってなくて、ニートになっていたかもしれない。
こうやって今楽しく暮らせるのも玄武君のおかげなんだ。
俺は青山君も大好きだけど、玄武君のことも大好きなんだ。
とうとう明日。