孝太さん、今までの返信内容からタチだと思ったのかもね〜。早とちりかぁ。タチを攻めてみてどうだった?彼氏は初ウケだったのかな?のっちさん、関西と関東のつきあい!すごいね〜。相手は何歳なのかな?
長い間会えなくてもヒカルの明るさは変わっていなかった。一時の暗さも今は全くなくなっている。
光「まだ飯には早いし買い物でもするか」
いつもの様に進んで俺を引っ張って行っていくところもそのままだ。
俺「うん。でもまた際限なく買い物するんでしょ?お茶の方が良くない?」
光「平気平気!」
軽い言葉にちょっと心配したが、言葉通り今日はウィンドーショッピングに徹する様子だ。
光「全くなぁ…泣く事ねぇのに」
買い物中商品を手に取りながら独り言の様にずっとその事を話している。半ば無視を決め込んでいたがあまりにも繰り返し言うので相手にせざるを得なくなってしまった。
俺「…俺の事を言ってるの?」
光「他に誰かいますかねぇ〜」
俺「…仕方ないじゃん。今までずっと入試でピリピリしてたんだし会えなかったんだからさ。顔見たら自然に出てきちゃんだよ」
光「何を今さら可愛い事いいやがって」
ようやく店を出て歩道をブラつきながら話す。街の喧噪に紛れての会話になった為、これだと少しくらい大きな声で話しても周りには全く聞こえないはずだ。
光「まぁ確かに分かるけどな。ただおまえって外見からは想像つかないくらい気が強いだろ?人前で泣くところなんて見た事ないしな。まさかあんなタイミングで泣かれると俺が困っちまうよ」
俺「俺ってそう見える?」
ヒカルは俺を探る様に覗く。
光「そうでもないかっ。…そうだな、弱っちくは見えないな。まぁ俺の先入観かな」
俺「俺って面接ではいい印象ないのかもね」
ちょっとオドケて頭を抱えて見せる。
光「入試の事か?もう終わったんだしいつまでも考えてたって仕方ないだろ」
そりゃそうだ。俺も忘れたいと素直に思う。
光「でもな、泣くぐらいだったらいつまで経っても俺がいなけりゃダメって事なんだろ?なっ!」
いきなりの言葉に驚きヒカルの顔を見返した。その表情からはどんなつもりで言ったのか真意が掴めず返す言葉もすぐに浮かんでこなかった。
俺「…そうかもね…でもさ…」
光「まぁいいや。飯食おうぜ」
何が『いいや』なのかさっぱり分からずいつもの様に曖昧なままとなってしまい、食事中も一切その話に触れる事すらなく、ただただ残るのはいつもの消化不良だけだった。