独身寮の玄関口にタクシーが停車し、
安西が運転手に上司に貰っていたタクシーチケットを手渡す。
後部座席から降りた俺はやはり千鳥足でフラフラだった。
安西「ありがとうございました〜って太一さん!」
同じく後部座席から降りてきた安西に、
肩を掴まれる。
俺「ンだよ…」
安西「部屋戻って、水かジュース飲もう!ね!」
俺より身長の高い安西(多分、175ぐらいで10センチ差かな)の肩に手を回され、
正直少し痛かったが
確かに足取りがシッカリしていなかったので甘える事にした。
安西「太一さん、部屋203でしたよね?鍵は?」
俺「…ん」
後ろポケットから出した鍵を安西に手渡すと、
そういえば部屋の掃除してないな
と思ったけど、別に男同士なんだし
特に気にはしなかった。
ガチャリ。
安西が部屋の扉を開き、中から生暖かい空気が出て来る。
安西「汚ッ」
部屋の入口にゴミ袋積んでたから、確かに見栄えは悪い。
俺「お前、結構失礼だな…」
飲み会始めガチガチだった安西の打って変わっての様子に
半分呆れた様子で言うと
安西「良いから、重いんでとりあえず座って下さい」
ベッドに座らされた。
とりあえず、ベッド横に置いている冷蔵庫(かなり小さいヤツ)から
ミネラルウォーターを2本取り出し、
片方を安西にやると
安西「あ、どーも」
横に、ボスッと音を立てて座った。
俺「いえいえ、こちらこそどーも」
そこで暫くの沈黙。
正直、部屋に送って直ぐに帰ってくれるもんだと思ってたし
自分のテリトリーに戻って一気に眠気が襲ってくる。
まだ日も変わらない時間だけど、とりあえずコンタクトレンズだけでも外したかったが
安西が全く動く気配が無い。
安西「一緒の寮なのに、太一さんとこんなに話すの初めてですよね」
俺「…あ?うん、そうだな、確かに」
安西「いっつも眉間に皺寄せてるし、噂もあったんで、もっと絡みにくい人かと思ってました」
俺「何でやねん(笑)まぁ、アレだ。とりあえず、そろそろ」
この社交辞令的な会話も眠くなるだけなので、
話を折って帰そうとした。
しかし…