家庭教師の生徒ですごくカッコいい子がいた。
それがテニプリやNANA2に出てた本郷奏多という子にびっくりするぐらい似てて…。
会った時は本郷奏多という人の存在は知らなかったんで、テレビで初めて見たとき「えっ」て声が出てしまったくらいそっくりで。
そして性格も(…て、本郷奏多の性格は知らないんだけど…雰囲気)似ていて、小生意気でちょっと大人ぶってるクールな感じ?
なので一応ここでは、その子の仮名「かなた」ということで…。
中学二年生の時担当していた。
「なあ、テニスの王子様って知ってる?それに出てる子がかなたにめっちゃ似ててんけど。」
かなた「…ああ。なんか聞いたことある。てか女子が言ってた。見たことないけど。」
数学の問題を解きながら、興味無さそうに答えた。
顔はとにかくかわいいけど、敬語なんて絶対出てこないような生意気なガキだった。
笑顔もあまり見せず常に冷めている雰囲気。
でも、いうことは一応聞くし、何より頭が良かったので、ほっといても勝手に自分で勉強していくって感じで、家庭教師的にはかなり楽だった。
かなた「できたっ。ここ終わったからちょっと休んでいい?」
「はやっ。もう終わったん?おお。ええで。」
こんなんで月謝もらってていいんって感じ(笑)。
で、この落ち着いた雰囲気をいつも壊しに来るのが小5の弟えいた(仮)。
えいた「先生ー、いつの間に来とったん?なあ、教えてほしいとこあんねんけど。」
かなた「ちょー、えいた邪魔しに来んなや。」
「えいたいっつもうるさいからなあ。教えたるから、静かに勉強しろよ。」
えいた「うん。当たり前やん。」
えいたは基本的に邪魔係(笑)。
本契約ではないけど、宿題等でわからないところがあるときは聞きに来て、ついでに教えるという感じ。
それでいつもお兄ちゃんの部屋に登場して、騒ぎながら勉強している。
だからほとんど90分間はえいたの世話という感じ。
まあ、かなただけだったら世話がかからずほとんどヒマなのでちょうどいいといえばちょうどいい。
でもある日、えいたが母親と出掛けていた時があった。
「あれ、今日は1人?」
かなた「うん、今日えいたが野球の大会でおかんも送っていったからおらんねん。」
「そうなんや。」
かなた「ああ、気ぃ散らんで勉強できるー。」
文字通り家の中は二人きりで味わったことのない静けさだった。
「かなたわからんとこないかー?」
かなた「うん。…。」
…。
ヒマだった。
かなりヒマ、そして静かだったんで、うかつにもうとうとっときて、寝てしまった。
そして気付いたとき、肩に手をおいた感触と、すぐ目の前に何かがある感覚があった。
かなたの顔だった。
びくっとして目を開けると、かなたもかなりびくっとして俺の体から離れた。
かなたはすぐに自分の机に戻った。
そして慌てた感じからいつものかなたに戻った。
かなた「先生ー、寝てたやろー。」
「ごめん。ついっ。」
かなた「おぃおぃ、仕事中やろー。給料もらってるくせに。」
「ごめんて。だってめっちゃ静かやねんもん。」
本当に反省した。
…。
そして目覚めた時のことを思い出した。
かなたの顔がほんのすぐ目の前にあった。
そこまで普段近づいたことはないし、そんなまじまじと顔を見つめたことがないので、あまりのかわいい顔に、思い出してドキドキしてしまった。
いつもはえいたがいるし、一応は先生と生徒なので、そういう意識は持たないようにしていた。
でも、色白のきれいな顔は、間近で見たせいか、脳裏から離れなかった。
そして、俺の顔を覗き込んだのか、顔を異様に近づけていたのも少し気になった。
かなた「先生。」
「えっ、あー、何?」
かなた「これってどうやるん?」
「あー。これは、式を二つ作って、…」
やばい。ちょっとドキドキしてしまう…。
かなた「先生あのさ、」
突然声のトーンが変わりかなり小さくなった。
「なに?」
かなた「…。
あの…。アドレス…。教えて。」
「え、いいけど、なんで。」
かなた「え、わからん問題とかあったら聞こうかと思って…。」
家電は当然として、お母さんの携帯のアドレス等は知っていたけど、生徒とメールはしたことがなかった。
そしてそんなに仲良くもないというか、そんなに俺を慕ってる感じでもないのに(笑)、今日のちょっといつもと違うかなたの雰囲気と合わさって、違和感があった。
そして時間が終わり家に帰った。
帰っている途中でさっそくかなたからメールがきた。
(宿題って数学だけやんな?)
かなたそのままって感じの素っ気ないメール(笑)。
まあ、中学生のガキやし…。
と思ってたらなんとメールが毎日来た。
しょうもない一行メールだけど、1日5件くらいは来ていた。
最近の中学生ってよくわからんなと思いながらも、俺もいつの間にかかなたからのメールを楽しみにしていた。