最悪だ。
友人のAがビールのジョッキ片手に立ち上がる。
『検証は亮に決定ー!』
(信じらんねー…)
俺は未だチョキの形を保つ手を見つめ、軽く目眩がした。
あれだけ強気な事を思っても、やはり負けたとなれば、それなりにダメージがくる。
Aは、ビールを飲み干すと、自分のバックからスケジュール帳を取り出した。
『じゃあさっそく明日の予定を…って、亮!』
(あれ?)
俺はぐにゃーっと歪む視界にバランスをうしない、目の前に立っていたTの胸に倒れてしまった。
『亮?!おいしっかりしろ!亮っ!』
『んー…ぅ…』
『亮っ!』
頭がぼぅとして、歪んだ視界がどんどん暗くなっていく。
Tの慌てた声も、連中の心配する声もどこか遠くて、聞き取れなかった。
唯、Tに抱き止められている感触がやけに心地良くて…。
『亮っ!』
ふつりと意識が無くなった。