お待たせしました。まだまだ書きますんで、よろしくお願いします。
早朝ぼくはIの家に行った。30分くらいしてIが家から出てきた。ユニホーム姿で、大きなかばんを下げ、気合十分といった感じだ。
「おはよう」
ぼくは照れながら言った。
「お?じゅんき?なんでここいんの?まだ5時半で?」
「なんでって、応援しに来た。約束したろ?」
「したけど、こんな早くから来んでも笑”試合は10時からだし、俺これから練習行くし」
「なんか目が覚めてさ。お前が緊張でミス連発するんじゃないかって、心配で笑”だから今日は一日中応援しようと思う。俺がいればなんでもできるんだろ?笑”」
なんだかぼくらしくない。Iのために朝から何してんだろ笑”ただ、少しでもIの力になりたかった。
「ほんまかぁ!じゅんき〜!やっぱり俺のこと愛してるんじゃなぁ」
Iは心から喜ぶ。
「それは知らん笑”俺も練習ついて行っていいか?」
「全然かまわんよ!まあゆっくりしてってくれ笑”あ、そうだった。おでかけのキスせんとな笑”」
そうくると思ってた。ぼくも今日は考えてきたんだ。ぼくは辺りを見回して人がいないのを確認する。
「ええよ。今日は。その代わりぜってぇ負けんなよ」
「え?ほんまか?なんかじゅんき気合入ってるなぁ笑”」
ぼくは無視して目を閉じる。
唇に柔らかさを感じる。そのまま腕がぼくを抱きしめる。
唇が離れ、Iが耳元で囁いた。
「ありがとう、じゅんき。俺ぜってぇ勝つから」
抱きしめていた腕が離れて、ぼくは目を開ける。Iがぼくの目を見てやさしく微笑む。
「じゃあ行くか」
Iはそう言うと、かばんを持ち上げて歩きだした。
練習場所に着いてから、Iは野球部の人と行動するため、ぼくはまったくIと話すこともなく、目を合わすこともなかった。
Iは真剣な表情で、野球に集中している。それは本当にかっこいい姿だ。ぼくはなるべく邪魔にならないように離れた場所にいたが、ずっとIを目で追っていた。
そしてついに試合開始。
この予選で負けると、3年は引退、というとても大切な試合。
とても良い試合で、両チームとも粘り強くて、0対0が続く。
Iのポジションはセカンドで、打順は7番。チームでも頼られていて、しっかりと活躍していた。
捕って、投げて、打って、全速力で走って、滑り込んで、監督の話を息切れしながら真剣に聞いて。
汗と泥にまみれていくIは、やはり生粋の野球少年で、なぜだかぼくはそれを誇りに思った。
しかし事件は起こってしまった。
Iが大切なところで送球ミスをしてしまったのだ。3塁ランナーはホームイン。
次の回でラストというときに、0対0から1対0に。
その回はそれで持ちこたえたのだが、雰囲気は一変した。そして、こちらはそのまま点を入れることができず、試合終了。
ぼくは球場の外でIを待っていた。
他の人が次々と出てくるなか、Iが全く見当たらない。Iのチームの1人に聞くと、まだ更衣室にいる、というので、ぼくはIのもとへ向かった。
つづく。