ぼくは確実にIのことが好きになっている。
「じゃあ次は卵割ってくれ」
Iは野菜を炒めながらぼくに指示する。
「ああ、これ入れたら出来上がりか?」
「おう!ぜってぇうめぇ!保障するよ」
Iは手馴れた様子でキッチンに向かい、朝食を作っている。ぼくはただそれについていく。
「お前って料理するんだな。なんか俺昨日から世話になりっぱなしだな」
ぼくは苦笑する。Iの新たな一面を知るたびにぼくの胸は熱くなる。
「ほんとだよ!まぁ俺に感謝したまえ。オッシ!できた!」
Iは皿に盛り、テーブルに並べた。
「うわ!けっこう本格的じゃん!美味そうだな!では、いただいきます!」
「だろ?まあ味わって食えよ」
ぼくは口に入れた。
「うわっ!なんていうか……辛い笑”」
ぼくは牛乳で一気に流し込む。
「は?嘘だろ?素直においしいって言えよ笑”」
Iも口に含む。
「うぁ、なんで?なんでこんな辛いんなら?………でも、食えんことはないだろ?」
Iは苦笑いでぼくを見る。ぼくはそんなIを許す。
「食ってやるって!牛乳で流し込めば味なんかわからんしな笑”」
「じゅんきお前っていい奴だな!って、俺は喜んでいいんか?笑”」
ぼくらはこんな感じでいつもと変わらずに過ごした。
正直ぼくは昨日のことを考えると、これからどうIに接していけばいいのだろうか、と不安だったのだが、そんな不安は必要なかった。
と思っていたのだが、やっぱりぼくらはおかしかった。
「ああ、食った」
ぼくはなんとか食い終わり、先に食い終わって皿を洗っているIのところへ行き、皿を渡した。
「おお。サンキュウな」
Iは振り返り皿を受け取ると、そのままぼくの唇を奪う。それはまるで恋人同士のようで、自然なキスなのだが、ぼくにとってはやはり不自然すぎて、ぼくは目を背けて、何も言えなくなる。
Iはずっとそんな感じで、ことあるごとに抱きついてきたり、キスしてきたり。
ぼくは内心嬉しいのだが、それ以上に恥ずかしい。
Iは恥ずかしがるぼくなどおかまいなしだった。
ぼくらの関係は一線を超えてしまったんだ。
ぼくはこの変化に戸惑い、複雑に感じた。
つづく。