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さよならの向こう側には…【涙の受験編、中編】18〜20
 長編編集部φ(..)  - 07/6/28(木) 15:00 -
光「はいよ。これプレゼント」
一緒に風呂に入った後、ベッドに横になったところで唐突にプレゼントを渡された。
俺「俺もだよ」
慌てて俺もカバンから取り出し渡す。
光「あれっ?この間のサイフと一緒って事じゃなかったのか?」
俺「やっぱり今日渡さないのも寂しいでしょ?」
そう言ってお互いに交換した。
光「なんか俺ばっか得したみたいだな」
俺「構わないよ」
話しながらヒカルが先に開け出したので、俺はどんな反応をするのかをじっと観察していた。
ヒカルは中を見て一瞬ビクっとしたようだ。
光「なんだよー」
予想外な反応だ。少し引き攣った顔をしている。
俺「気に入らなかった?あの時に欲しいって言ってたから喜ぶと思ったんだけど…」
光「そうじゃないよ、すげぇ嬉しいよ。でもそっちの…。ほらっ、開けてみろよ」
俺は意味がわからずヒカルからのプレゼントを開けてみた。ゆっくりと中のケースを開く。
中を見てヒカルの言っている意味がようやく理解できた。
俺「あ〜、なるほどね〜」
2人で顔を見合わせ笑ってしまう。
ヒカルにサイフを買ってあげた後に2人でアクセサリーショップに寄った時、お互いに『これが欲しい』って言っていたブレスレットがあった。それぞれ全くタイプの違うものだったが、それが偶然にもお互いのプレゼントになったわけだ。
俺「お互い近場で済ませちゃったもんだね。でも欲しかった物だから嬉しいよ」
光「そうだよな。まぁいいか」
そう言ってそれぞれの手首に巻いてあげる事にした。
一緒にベッドに横になり、一時ブレスレットの話で盛り上がる。
しばらくすると話も尽きたのかいつのまにか静かになった。
ブレスレットを巻いた手を握りあっていたが、いつしかヒカルの握力が段々と弱まり始め、寝息も聞こえてくるようになる。ちょっと横を向くとヒカルの寝顔が見える。
今ここにはケーキもキャンドルもない。ロマンティックさの全くない妙な部屋でクリスマスイブの夜を過ごしている。
『今はヒカルが横にいてくれるだけでいいよ』
そう思いながら俺も眠りにつく。

次の日再びバイクで戻る。日差しがあるせいか昨日の夜ほど寒さは感じなかった。バス停まで送ってもらいその日はまっすぐ帰った。

慌ただしい年の瀬も一気に過ぎて、矢継ぎ早に新年を迎える事となる。
大事な1年になる事は充分分かっているが、一体どんな年になるのかと多少不安に思っていた。
『できれば平穏に過ぎてって欲しい』
そんな思いとは裏腹に、受験、プライベートと正に波乱に満ちた1年となっていった…。


担任「…てことで今年は大事な年なんだから、みんなも心して頑張るように」
年も明けて冬休みが終わり、また学校が始まった。
結局休み中にはジンに会えないままだった。ヒカルともクリスマス以来メールをしていただけで会っていない。
HRで担任の話を聞いている間、クラスの様子を一通り窺う。後ろを見るとユタカと目が合って明るい表情でVサインをしてきた。俺の横の方にはコウがいる。黙って話を聞いている様だ。そして前の方にはカズヤの背中が見えるが、後ろ姿なので様子を窺う事はできない。
あれ以来コウともカズヤともあの時の話にはならないので、どんな風に思っているのかも分からないままだった。ユタカは何も知らないんだろうけど、コウとの仲の良さを考えると話を聞いている可能性もある。こうしてみるとそれぞれの間には表面には出さない微妙な空気が漂っているように感じられて不安を感じてしまう。
ようやく担任の話が終わり、この後学年最後の席替えとなった。
クジ引きで1番を引いた者から順番に好きな場所を選べる。このクラスの特徴からいって、いつも通り前の方から席が埋まってくる。俺達4人は後ろ寄りの窓際の席になった。俺の前の席がユタカで、その右隣りがカズヤ。カズヤの右後ろがコウだ。つまりコウは俺の右側の1つ飛びの所になる。
カズヤだけはもう少し前が良かったと不服な様子だが、以前よりも4人が固まったので会話もしやすいし昼飯も食べ易くなるはずだと思う。窓際はちょっと寒い事もあるが、気晴らしに景色も見れるわけで雰囲気として俺はとても気に入っている。

今日は午前中で終わったので、ヒカルと一緒に帰る約束をしていた。なかなかヒカルが来ない為寒い玄関でしばらく待つことになる。短い冬休みとはいえ久しぶりに顔を会わせる奴がほとんどなので、すれ違い様頻繁に挨拶をする事が多かったが、長らく待たされたせいでそれもなくなり、人もほとんどいなくなった。
光「お待たせ」
30分くらい待たされようやくやって来た。気を使ってか走って来たようだ。
光「担任と話があってさ。悪かったな」
俺「凍えるかと思った」
光「ごめんな。でも待っててくれると思ったよ。バイクに乗ってるよりは暖かいだろ?」
確かにその通りだ。
そんな話をしながらヒカルと玄関を出た所で、脇から女子が2人近づいてきた。多分2人とも1年生だ。俺とヒカルに別々の子がそれぞれ手紙を渡し、恥ずかしそうに走り去っていってしまう。一瞬の事だったので言葉のやり取りもないままだった。
俺「なにこれ」
光「普通はラブレターだろ」
俺「そうだよね。でもタイミング良く1枚ずつ」
そう言ってちょっと笑ってしまう。でも向こうも俺達がいつも一緒に帰るって事を知っていてこの時を待ってたって事だからあまり笑えない事態かな…。
光「おまえの方のを寄こせよ」
ヒカルがちょっと怒りながら俺の手から手紙を取り上げ破ろうとした。
俺「ちょ、ちょっとダメだってば!せっかく書いてくれたんだから、何もいきなり破る事ないじゃん。可哀想でしょ?」
ヒカルも思い留まったのか破るまではしなかった。再度ヒカルから奪い返す。
光「ってか何でおまえに女が渡すんだよ」
俺「いけない?それにヒカルだってもらってるでしょ。何で俺ばっかり責めるのさ」
光「うるせぇよ」
そう言ってプイっと横を向いてしまう。
確かにラブレターをもらう事は嬉しいが、俺にとってそんなに興味のある事ではなかったので中身も見ずに鞄の中に閉まった。
意味も分からずヒカルのご機嫌を取りながら家路に着くことになった。

2月になると3年生はほとんど学校に来なくなる。必然的に2年が最上級生という立場になるわけで学校の様子も気持ちの面でも大分変わってくる。
というわけで、3年の溜まり場となっていた例の図書館の中二階の奥のスペースも、ジンが真っ先に名乗りを上げた事もあるが、大方の予想していた通り俺達が頻繁に利用する事となった。以降特に昼休み等は5人一緒にここで時間を潰す事が多くなっていく。

2月のある日の昼休み、ヒカルと図書館に行くことになった。入口まで行くと反対側からジンが歩いてくるのが見えたので、ジンが来るのを待って3人で中に入っていく。
仁「今日はみんな学校をサボりやがって俺だけだよ。なんかつまんなくて来たけど、おまえらがいなきゃどうしようかと思ったぜ」
俺「意外に寂しがりやなんだね」
光「知らなかった?それで中学時代から俺にくっついているんだぜ」
仁「よく言うよ」
そんな会話をしながら奥まで入っていき椅子に座る。ヒカルが俺の横で、ジンは向かい側に座った。
話が一段落すると俺達を見ながらジンが言った。
仁「おまえ達ホントにいつも一緒なんだな」
その言葉をキッカケに少し間それぞれの顔を観察するような雰囲気になる。
どうやら、ようやくあの時の話の続きをする機会になった事を3人とも感じとった様だ。


仁「でさぁ、おまえらどこまでやっちゃってるわけ?」
唐突に、それも強烈な質問をジンはしてきた。
ただ、やっぱりノンケであるジンに聞かれるとすんなりとは話せないものがある。
光「おまえさぁストレート過ぎない?しかも最初の質問がそこからかよ」
さすがのヒカルもすぐには答えない。
仁「いいだろ?別に誰もここにいないんだし俺だけなんだから」
光「おまえだから話にくいんだよ」
仁「そんなもんか?」
俺に向かって聞いてくる。
俺「そうだね。同じ様な経験のあるヤツのほうが話しやすいとは思うよ」
仁「俺はそういうのないからなぁ。まぁいいだろ?で、どこまでだ?」
笑わないで聞いてくるので逆に怖い。まぁ真面目に考えてくれているのかも知れないが…。
仁「やっちゃった?」
ヒカルが諦めムードで下を向きながらコクリと頷いた。
仁「へぇー。おまえらがねー。それで、どんな風にやるんだ?」
光「どんな風にって…、まぁ、最後まで…」
ジンは何か考えている様子だ。
仁「女とやるようにって言うことか?」
光「…そうだよ」
また考えている。
仁「ふーん、なるほどね。それで…その…、両方ともお互いにやりあうわけか?」
ヒカルが何か言いたげに俺を見た。俺がウケだって事に気を使おうとしたのか、クリスマスの日にヒカルに入れた事をジンに知られたくなかったのか、どちらか分からなかった。
光「内緒」
仁「なんだよ、そこまで話といてさぁ」
俺「俺がいわゆる女役」
ヒカルがどっちの考えでいたのか分からなかったが、ヒカルを傷つけることにならない様に俺から話した。
仁「そっか。まぁそうだろうな。おまえらを見てるとどっちがどうか大体分かるよ」
光「おまえ、シュウの気持ちを考えて発言しろよ」
ヒカルがジンに釘を刺す。それでヒカルが内緒って言った意味もある程度理解できた。ジンもなんとなく察した様だった。
仁「あー、ごめんごめん。でもおまえ女とつきあったりしてただろ?それが何でこうなるわけ?」
光「分からないよ。気づいたら好きになってたんだから」
仁「女よりもいいのか?」
光「うん」
仁「他の男は?」
ヒカルがなぜかそこでチラッと俺を見た。
光「絶対ダメだな。キモくて考えられない」
仁「俺でも?」
光「全然イケてねぇよ」
特に大げさに表現したのでちょっと苦笑した。
仁「それで、いつからそうなったんだ?」
光「2年になってすぐだな。4月だったから」
仁「どうやってコクった?」
またヒカルと顔を見合わせる。今度はお互いに笑ってしまった。
光「そういえばここでだよな」
俺「うん」
仁「ここ?」
光「そうさ。ここが最初だよ」
仁「どうコクったのさ?」
俺「今度こそ内緒!」
なんとなくあの日の出来事が最近の事の様に思い出される。大事な思い出だからあまり話したくない。
仁「なんだかな。でもまぁいいや。最初に話を聞いた時、かなり焦って何も言えなかったけど、俺は別に2人がどうしたって構わないし、そんな事で嫌うつもりはないからな。それに誰にも言わないでおくからさ。2人の事は今からもずっと大事な仲間なんだし、俺としてはつきあいも認めるよ」
ジンの優しさが充分感じられる言葉だ。そう言うジンの顔を見て、改めて友達としての信頼感を強く持っていた。
仁「でも2つだけ条件がある」
突然そう言ったので俺は少しだけ身構える。
光「何?」
仁「1つ目は、もし2人が別れることになっても、将来ずっとイガミ合うような事にはなるなよ。そういうのは俺が困る。喧嘩したら真っ直ぐ俺の所に来ればいいさ。両方から話を聞いて俺が判断してやるからさ」
こういう時の判断は確かにジンがうってつけだ。ヒカルも頷いている。
仁「それからもう1つ」
少しだけ間を空けて言った。
仁「どうやってやるか、1回でいいから俺にやってるところを見せてみろよ」
ヒカルとジンが2人で顔を見合わせ、バカみたいに笑い出した。
光「一度味あわせてやりたいくらいすげぇ気持ちいいんだぜ!」
仁「じゃ飽きたら貸し出せよ!」
光「やだね、冗談じゃない」
その横で2人を見ながら俺はため息をつくだけだった。


引用なし

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Re(2):さよならの向こう側には1〜7 カズ 07/6/23(土) 11:28
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