和「それにしてもおまえさぁ結構きれいな身体してるんだな。今まで着替えとかも見た事あったけど気づかなかったよ」
俺「身体はカズヤのほうが圧倒的に上でしょ」
和「そうか?見てみる?」
言うが早いかカズヤはTシャツを脱いで上半身裸になった。いきなりでビックリしてしまう。これほど近くで見る機会は今までなかったが、やはりスポーツで鍛えた逞しい筋肉は、ヒカルとも違う男らしさを感じる。
俺「すごいね。やっぱり憧れる」
和「触ってみれば?」
最初に握っていた手を腹筋の辺りに導いた。ちょっと腹に力を入れた様で、固く割れ目がはっきりとした腹筋が浮かんできた。
俺「自分が情けなくなるよ」
和「そんな事ないさ、おまえだって少しは腹筋ついてるし綺麗だよ。焼けてるけどツルツルしてるしな」
そう言って俺の胸の上に顔を擦り付けてきた。俺もカズヤの頭を抱く様にする。どこか今のカズヤだったらここまでしても構わないという雰囲気になっていた。なんとなく知らずの内にカズヤのペースにハマっていってしまっている。遠回しにされ安心してると、いつのまにか踏み込まれてしまうのだ。
カズヤが身体をずらすと足にカズヤの固いモノが当たるのに気がついた。
俺『カズヤはすでに反応しているんだ』
俺は逃げるように身体を捻ろうとしたが、すでにカズヤに上に乗られていたので思うように身体が動かなかった。
俺『ヤバい、このままだと…』
そう思う気持ちとは裏腹に、俺の身体も反応し出していた。
俺「カズヤ、重いよ」
和「もう少しだけこのままでいさせてくれよ」
そう言って身体を少しずつずらしてくる。
和「肌が擦れるのって気持ちいいんだな。もちろんおまえだからだけど」
俺「カズヤは女の子とエッチとかした事ないの?」
和「えっと…まぁそうだな、ハハッ」
スポーツマンでありイケメンでもあるのに、よっぽどカズヤは奥手なんだ。
ただいつからか俺だけには大胆さを見せている。考えてみると部室で話してから、しかもヒカルと俺の仲に気づいてからではないかと密かに思っていた。
すでに完全に重なり合うようになってしまっている。俺の足の間にカズヤが入る感じだ。多分俺のモノが固くなっている事も気づかれているはずだ。
俺「カズヤ、もう終わりにしよ?」
和「もう少しだけ」
俺「でもヒカルの事もあるし、もう帰らないとならないから」
和「いいよ、泊まっていけば」
俺「そんなわけにはいかないよ。お願いだからさ」
カズヤはゆっくりと身体を上げたので納得したものと思ったが、カズヤの口を突いて出てきた言葉はまったく違っていた。
和「おまえ自分が勃ってるのがわかってんだろ?ヒカル以外でも感じてるって事だろ?俺だって我慢したいけどやっぱり我慢できないよ」
俺は身体を起こそうとしたが、カズヤに両腕を取られ身動きできなくなった。かなりの力だ。
俺「さっきはヒカルの事を一緒に心配してくれただろ?頼むから離せよ」
なんでもいい、言い訳だけして今は離れなければ…。
俺「次ならいつでも良いから今日だけはしたくないよ」
和「ごめんな。我慢できないし、俺は今日だけでいいから」
一向に離そうとせず、両手を捕まれて頭の上で固定された。カズヤの片手でだ。そしてもう片方の手をジーンズとボクサーの中に強引に入れてきた。
俺「やめろよ!」
和「すげぇ濡れてるな。身体は嘘がつけないな」
モノを握られしばらく弄ばれる。ベルトを外され、ファスナーを降ろされた。
俺「カズヤ頼むからやめろよ!最低だよ。いつものカズヤじゃないよ!それが好きだったのに!もう嫌いだよ!」
和「…いつもの俺?」
その言った時にカズヤの力が一瞬抜けたようだったので、腕を振り解き全身の力を込めカズヤを突き飛ばした。
カズヤがベッド脇の本棚にぶつかるのも気にせず急いで離れた。
和「イタっ!おまえやりすぎだよ」
そう言って頭を押さえている。
俺「ごめんね」
とても心から謝っているとは思えないくらい全く感情がない謝り方で言った。
なんとなく気まずい雰囲気が漂い、しばらく無言でいる。
俺『気マズいはずだよ。俺にとってはヒカルへの想いがある。でも確かにカズヤの事も好きだという気持ちを抱いている。ヒカルだけじゃなくカズヤも俺に愛情を持ってくれている様だし、それはすごく嬉しいし俺にとっては有り難い事だ。でも両立なんて無理さ。どちらかを傷つけるだけだ。今だってヒカルを裏切っているしカズヤにも酷いことをしている。それなら今後どうしていけばいい?』
カズヤに向けるよりも、どう整理すればいいのかわからない自分に対して腹が立ってしまう。
カズヤを見ると、俺の様子を窺っていたのか目が合った。
和「嫌いとか俺じゃないとかさぁ、少し言い過ぎだろ?」
俺「だっていつものカズヤじゃないよ。もっと控えめなはずなのに…信じて少し気を許すとすぐに先へ行こうとするんだから」
カズヤは少し間をおいて苦笑気味に笑いながら答えた。
和「そうだな、つい調子に乗っっちゃったかもな。悪かったよ。でも嫌いとか言うなよな」
俺も自分に対しての腹立たしさから、あまりカズヤを責める気にもならない。
それによっぽどの進路変更がない限りカズヤとは3年になっても同じクラスになるはずだ。これから先卒業までずっと仲が悪いままでいるなんて事はできない。
俺「嫌いじゃないよ。俺も言い過ぎたし、俺も悪いから」
和「そっか、良かったよ。これから修学旅行中もずっと話さえできないんじゃ耐えられないからな」
俺「俺もそう思ってるから」
お互いに曖昧に済まそうという雰囲気の中で、なんとなく気持ちも収まってしまう。
時計を見たらもう遅い時間だった。
俺「ヤバっ。そろそろ帰らないと」
和「もう帰るのか。じゃバス停まで送るから」
そう言って慌てて2人でカズヤの家を出た。
時間がなかったので自転車に2人乗りしてバス停まで向かう。
風はもうかなり冷たくなった。夜になれば尚更だ。すれ違う車のヘッドライトがなんとなく暖かそうに見える。
ただ、考えてみれば後ろに乗っている俺よりもカズヤの方が風を受けて寒いに違いない。
俺「寒くない?」
和「平気だよ」
そう言うカズヤの広い背中を見ているとやっぱり頼りがいがある。
和「あのさぁ答えなくてもいいから聞いていてくれよ。ヒカルがいても俺の気持ちはあまり変わらないから」
カズヤは唐突に言った。
顔が見えないのでどういう表情で言っているかが分からないが、“ヒカルがいても”という言葉にカズヤの切なさが込められている様で俺の心に重くのしかかる。
俺「うん」
どっちともつかない言葉で返事だけ返した。
和「やべぇ、バスが来た!」
バス停の少し前でバスが向かってくるのが見えた。カズヤは一段とスピードを上げて自転車を扱ぎなんとか間に合わせる。
俺「ありがと。じゃね、また学校で」
手を振ってバスに駆け込みカズヤと別れた。
家に着くまでのバスの中で考える。
『すごい一日だった…。カズヤの事を思ったりヒカルのことを考えたりして、心が揺れ動いていた。キスをされても避けなかったし身体を重ねても逃げずにいた時が間違いなくあった。俺は良い様にカズヤの気持ちを振り回してしまったと思う。やっぱり一番酷いのは俺か…。バスが着たからウヤムヤになったけど、別れ際の言葉は俺にとって辛いものがある。もちろんカズヤだってもっと辛いかも知れない。今頃家で落ち込んでいるかもな』
そう思いカズヤにメールを入れた。
俺『また遊ぼうね。修学旅行楽しもう』
すぐに返事が返ってきた。
和『おぅ!また月曜に学校で』
返事がきて少し安心した。別の事を考える。
『ヒカルにはなんて説明すればいいか…。ブチギレる顔しか浮かばない。怒って当たり前さ。謝るしかないけどなんて切り出せばいいかわからない』
考えなんてまとまるはずもなく、あっという間に家に着いてしまった。
『とりあえずきちんと話さないと』
今はそう思うしかなかった。
週が明けたが、昼休みはジン達も一緒にいる事が多かったのと修学旅行の準備とで、ヒカルにはカズヤの事を話せないままでいた。
カズヤとはあれ以来何事もなかった様に接している。学校では相変わらず寡黙な感じだった。
結局何も変わらぬまま修学旅行に突入してしまった。
今更ながら場所は京都。まぁ田舎の公立校なら仕方ないところか…。京都は好きだからいいけど。
弘「場所なんてどこでも構わないよ」
コウはそう言っているが、確かにその通りかもしれない。環境さえ変わればそれで良いって感じだ。
3日間のうち2日目と3日目は自由行動だ。
いつものメンバーで無理なく組んで自由時間を楽しむ予定でいた。
最初の夜、夕飯を食べた後に風呂の時間になったが、大浴場に3人を行かせて1人で部屋のシャワーを使う事にした。みんなに日焼け跡を見られたくなかったからだ。
しばらくしてからヒカルに会う約束になっていたが、まだまだ時間があるので、さっさとシャワーを浴び、出てから本を読んで寛いでいた。
そのうちにカズヤだけが戻ってきた。
俺「早かったね」
和「おまえがいないから早く来たんだよ」
俺はカズヤの話は無視してうつ伏せで読んでいた。
和「なんか見られたくないものでもあったのかな〜?」
カズヤはいきなり俺の足の上に馬乗りになって半パンとボクサーをずり降ろした。
俺はびっくりしてカズヤを振り落としボクサーを上げた。
和「へぇ、ヒカルが日焼けしろって言ったのは競パン跡をつける為なのかよ。可愛いケツだったな」
俺「カズヤ、最低!」
和「冗談だよ、怒るなよ」
怒ったわけではないが、カズヤに見られたという事があまり気分の良いものではない。ヒカル絡みの事でカズヤに詮索されるのが嫌だったからだ。
苛つきながら部屋を出て待ち合わせ場所に行くとすでにヒカルは待っていた。
俺「待った?」
光「今来たところだよ。なんかあった?不機嫌そうな顔だぜ?」
俺「別にないよ」
今のカズヤの行いもそうだが、修学旅行に来てまで嫌な気分にさせたくなかったので、カズヤの家であった事を話せないでいた。
しばらく雑談を楽しんだ後、明日また会う約束をして部屋に戻った。
部屋は和室になっていて、すでに4つ布団が敷かれていた。
なぜかどこに誰が寝るかも決まっている。端からユタカ、コウ、俺、カズヤだ。
『なんかヤバ目な順番だ…』
そう思いながらもしばらくみんなで話をして程々の時間に寝る事にする。
最近ゆっくり眠れていない。ただ家と違って場所が変わるとなかなか寝付けないものだ。
消灯の時間が来てすぐに布団に入り、しばらくみんなで雑談していたが、例え修学旅行とはいえいつもと変わらないこのメンバーではそれほど盛り上がる話もない。話の中心になるべき右側のコウからはすでに寝息が聞こえていた。それならば盛り上がらないのも当然だ。
左側に寝返りを打つとカズヤと目があった。
俺「まだ起きてたの?」
和「うん。家でもいつも遅いからこんなに早く眠れないよ」
コウやユタカに聞えないように囁きながらの話となる。
和「今日はヒカルに会ってきたのか?」
俺「うん」
ヒカルのことが気になるのか…。
和「もう話をしたのか?」
俺「何を?」
和「俺の家での事だよ」
俺「まだだよ」
和「言いにくいのか?」
当然言いにくいがあまり気にしていない様に装う。
俺「どうかな。まぁ今はあまり深く考えてないからね」
和「そっか」
しばらくは無言になる。
少ししてカズヤが手を出してきた。
和「握っててくれよ」
俺「ダメ!みんないるんだし」
和「握るくらいいいだろ。それ以上何もしないよ」
相変わらずカズヤとは思えないような発言だが仕方なく握ってやる。どうせ布団も密着しているし見られないはずだ。
満足したのかカズヤは笑みを浮かべそれ以上は何も話さなかった。
俺もそのまま眠りについた。