翌日眠い目を擦り準備をしてから朝食を食べ、バスで学校に向かう。ヒカルは寝起きが悪いと聞いていたが、今日はすんなりと起きた。
来週から試験だが、それが終われば夏休みが待っている。
ヒカルと学校に向かうバスの中、夏休みについて話していた。
光「どこかに出かけようぜ」
俺「そうだね、海なんかに行きたいな」
光「いいね〜。2人で真っ黒に日焼けするか!でもシュウは競パン履いて焼けろよ」
俺「なんで?」
光「イヤらしいからさ。身体が黒いのに白いケツってのが淫乱だからな。後ろから攻めたくなるだろ」
またそっちの話だ。
俺「ビキニで焼くの恥ずかしいし」
光「ダメ〜。決定だからな」
相変わらず言い出すと聞かない。
俺「ところで試験勉強はどう?」
光「聞くなよ」
俺「じゃ一緒に勉強する?」
光「いや、クラスの奴とするから。おまえはどうなの?」
俺「どうかな。でも昨日のジンの話聞いたら頑張らないとね」
光「そうだな。俺に感謝しろよ」
俺「はいはい」
そんな感じで学校に着く。
光「今日からは毎日一緒に帰ろうな」
別れ際にそう言って教室に消えて行った。
俺『もちろんさ』
後ろ姿を見ながら俺は思っていた。
それからはいつ何をするのにもヒカルが一緒だった。常にヒカルがそばにいてくれる。
試験はというと、俺はまあまあかなってところだった。それほど良くもなくって感じか…。
『もう少し頑張んないとな…』
一方ヒカルはかなりヤバめだった様だ。おかげで夏休み前半はほとんど毎日強制的に補習を受けさせられる事になった。せっかく楽しみにしていた旅行も水の泡…。そんな寂しい気持ちのまま夏休みに突入する事になる。
ヒカルの性格からいって、補習なんて出ないなんて言うんじゃないかと思ったが、意外に大人しく参加しているみたいだ。
謹慎以来の進歩なのか、担任に進級させないなんて脅されたのか、そのどちらかかそれとも両方なんじゃないかなって思っていた。
8月上旬までは全く会えず、毎日メールや電話で話す事になる。寂しいけど仕方ないかと諦ていたが、代わりに後半は頻繁に俺ン家に泊まる約束をしてある。その後ヒカルの家にも何日間かはお世話になる事になっていた。
俺達の田舎は観光地であり、夏になれば避暑地として多くの観光客が訪れる。また高校大学の体育会系合宿もかなり多く、夏休みの時期には元々の住民の3倍くらいの人工に膨れ上がると言われるほどだ。都心からも高速道路を使えば1時間ちょっとでたどり着ける距離なので当然と言えば当然かもしれない。実際にはわざわざ暑さを凌いでどこかへ出かける必要もないくらいだ。
俺は夏休みの前半を出来るだけ勉強に費やすことにした。ヒカルも補習だし、そのヒカルの為に後半は空けて置きたかったからだ。
前半はクラスの中でも仲の良い3人と頻繁に連絡を取り合って勉強を一緒にすることになった。弘成(コウセイ、あだ名はコウ)と豊(ユタカ)に和也(カズヤ)の3人だ。
俺はクラスメイトと仲が悪いわけではないが、逆に深く仲良くなるって事もなかった。学校の帰りに偶然一緒になって帰ることはあっても、遊ぶ事はないって感じだ。自然と微妙な距離を保っていたような気がする。そんな中でもこの3人だけはヒカル達といる時以外には仲良くツルんでいたと思う。
コウは明るくサバサバしたノリだ。俺によく悪戯を仕掛けてくる。体系は俺と同じくらいでショートヘアがよく似合っている。
コウと性格も似ていてよくウマが合うのがユタカだ。ただ俺達3人の身長が同じくらいなのに対して163cmとかなり小さく、その事を本人も気にしている。ロン毛で見た目も可愛く、背が小さいなりのおしゃれが良く似合っていた。
カズヤはラグビー部で、決して大きい身体ではないが筋肉質。文武両道を地で行くタイプで、切れ長の目が魅力的な感じ。みんなとは明るく話すこともあるのに、俺と話す時にはいつも寡黙な雰囲気を漂わせている。シャイなのかも知れないが、おかげであまり2人で話したことがない。実は密かに俺の憧れでもあった。
3人ともそれぞれにルックスもイケてると思うが、人付き合いがうまくないのか今は誰も彼女がいない。あまり同級生とも進んで話しているところを見たことがないが、後輩の女の子達にはそれなりに人気があると聞いたことがある。
夏休みの間、勉強をする時は学校の図書館って事が多かった。勉強と言ってもみんなで集まる時には夏休みの宿題中心になる。だからそれほど一所懸命ってわけでもなく、和気あいあいといった感じで進めることになった。
8月に入り、コウとユタカが俺ン家に泊まりに来ることになった。たまには環境を変えて勉強をするという意味もあったと思うが、俺の家だけ離れているのでちょっともの珍しかったのかも知れない。カズヤは部活が忙しいとかでやっぱり来れなかった…。
その日昼過ぎに2人がやって来た。
来るとすぐに勉強を始め、夕食を挟んでさらに続いた。
勉強が一段落つき、夜遅くになったので家で映画を見ることにする。ゆっくり寝ながら観たいって事になり布団を部屋に持ち込む。ベッド1つと布団1つしかなかったので、布団にはユタカが、ベッドには俺とコウが寝ることになった。
映画を見てる間は吸い込まれるように見入っているのか、2人ともかなり大人しく話すらしない。俺は何回も見た事があるわけで、少し退屈だったし知らないうちに眠りに落ちてしまっていた。
ふと目が覚めると、コウがベッドから出て別の映画に変えてるところの様だった。何時だろうか、まだ明かりもついている。ユタカは寝ているみたいだ。俺も黙って眠る体制を保っていた。コウが戻って布団に入るとすぐに映画が始まりだす音が聞こえてきた。
おそらく始まって5分もしないうちだっだろうが、不意に俺の唇に何かが触れる感触があった。
察するに多分コウの指だ。なんとなくソフトに触れてきていた。
俺はどうして良いか分からず懸命に寝ているフリをした。しばらくして今度は頬の辺りに同じ様に皮膚の当たる感触が広がる。息遣いから頬同士を擦り合わせている様に思えた。肌が広範囲に当たっている感覚がしばらく続いたが、それがなくなるといきなり太股から股間へと手が伸びてきた。
今さら身体を動かすことが出来なくて、俺は金縛りにあった様に固まっていた。すでにこの時点で俺のモノはビンビンになってしまっている。
いきなり半パンの上から握られた。しばらく指でなぞられたり揉まれたりしていたが、さすがに濡れているのが自分でもわかり、ヤバくなったので寝返りを打った。
コウも慌てて手を引いたようだ。反対側を向いて俺はずっとドキドキしていた。
それ以降俺は眠ることが出来なかったが、幸い何もなく映画が終わるとともにコウはライトを消し眠りについた様だった。しばらくすると背中越しに寝息も聞こえてきたのでホッとする。何がどうなったのかしばらくの間考えていたが、俺も知らぬ間に眠ってしまっていた。
次の日結構遅い時間に目が覚めた。コウもユタカもゆっくりと起き出す。遅い朝食後部屋に戻ったが、それ以降コウも特に変わったところがなくユタカといつものノリでジャレ合っていた。
結局昼過ぎに2人は帰って行く事になった。
まさかコウがあんなことをするなんて思ってもみなかったので、どう理解すれば良いのか1人になってから考えてみた。コウにそういう趣味があるとは今まで思いもしなかったが、特に俺から聞いてみるのもおかしいと思い、向こうから言ってくるまで黙っている事にした。実際のところ、その後夏休み中もコウに何回か会ったが、いつもと変わらない様子で接していたので俺も忘れることにした。
ただしこれがかなり後になってトラブルを生む事となる…。
ヒカルの補習の最後の日は午前中で終了だと聞いていたので、その日はクラスのメンバーと図書館で勉強しながらヒカルを待つ事に決めていた。前もって、終わったら図書館に来るようにヒカルにメールをしておく。
今日は4人が揃っていた。夏休みも半ばになり、ちょっと中だるみ的な雰囲気が出てきていて、今日は勉強もソコソコになんとなくみんなで世間話になっていた。
俺「今日は何時までここにいるの?」
弘「昼までかなあ」
豊「じゃ俺も」
和「俺は午後から部活だから。シュウは?」
俺「補習が終わったらヒカルと一緒に帰る予定だよ」
弘「そう言えばさあ、なんであいつらと仲良いの?」
おそらく今までこの質問をされた事は一度もなかったと思う。
俺「なんでかなぁ。でも一緒にいて飽きないし」
弘「いつも一緒にいるよな」
俺「そうだね。でもそんなに悪い奴らじゃないから」
豊「そうだよな。この学校の悪い事ってそれほどのレベルじゃないよな。他の学校の方がかなりヤバいって話聞くし」
俺「知り合ってみるとみんな普通だよ。そんな酷い事しないし」
少しの間こんな話が続いたと思う。最後に口を開いたのが今まで黙っていたカズヤだった。
和「俺はあまり好きになれない」
いきなり言われたので、何の事を言ってるのか理解するのに少し時間を要した。
一瞬3人で顔を見合わせてからカズヤを見た。コウとユタカはマズいって言うような顔をしている。
俺「何が好きになれないの?」
和「いつまでも子供みたいな事をする奴が好きになれない」
顔色一つ変えないで言う。
その顔はある意味ヒカルの表情に似ていると心のどこかで思っていた。
俺「俺がって事?」
和「シュウも同じ様なことをしてるなら、今からそう思うかも知れない」
俺「あまり言ってる意味がわからないんだけど…」
実際ここまで話しても、何に対して言っているのかが俺には飲み込めなかった。
弘「まあ、俺もコイツとよくジャレてるし、俺達も子供だよな」
そう言ってコウがユタカを指差して同意を求める。
豊「おまえが俺に絡んでくるからだろ!」
ユタカも笑顔でそれに返す。どう見ても場を和まそうって感じが伝わってくる。
俺もそれを見ながら笑って答えた。
俺「そうだね、俺もあまり子供っぽい奴は好きになれないこともあるし、みんながみんな友達になれればいいとは思うけど、雰囲気だけで好きになれない事とかもあるよ。友達になるって難しいよね」
精一杯普段と変わらない態度で話してみた。
俺『硬いカズヤの事だから、俺のグループの事を言っている様で、遠まわしに俺の生活態度のことを忠告したって事なのかな…』
密かにそう考えていた。
カズヤもそれ以上は何も言わなかったので、結局のところの真意はわからなかった。
別の話題に切り替わり、カズヤも俺もその話の中に入っていき笑いながら話す事になったので、少しだけ緊張感が解けてきた。
そうこうするうちに、補習が終わる時間が迫っている事に時計をみて初めて気づいた。
俺「俺そろそろ行くよ」
普段この4人で昼飯を食べている時にヒカルが来ることが多かったので、今日もここで待ち合わせをする事に問題はないは思うが、気まずい雰囲気になりそうだったので、ヒカルが補習を受けてる教室の近くで待つことにした。
またメールする事をみんなに伝え、手を振って図書館を出ようとしたが、カズヤに呼び止められる。
和「近いうちにメールするからたまにはゆっくり話そうな」
俺「うん、わかった」
俺は軽く笑顔を返し図書館を出た。
ヒカルのいる教室まで行きながら考える。
『確かにヒカルやジンのグループは普通じゃないけど、同じ学年でみんなからつま弾きにされているわけではないし、それぞれの友達も結構いるはずだ…』
『それに今話してたメンバーだって、ウチに泊まりに来た夜のコウの行動といい、俺にあまり話しかけないカズヤといい、充分普通の友達って感じじゃない…』
なんだか色々考えると何が普通のつき合いなのか分からなくなってくる。