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さよならの向こう側には1〜7
 長編編集部φ(..)  - 07/6/22(金) 17:47 -
俺は都内の大学に通う21歳4年生。ただし6年生大学なのでまだ就活ではないし、気分的には大学生活を楽しんでいる口かもしれない。
そんな俺もここまで来るまでに、いくつかの出会いや別れを繰り返してきた。寂しかった別れもあれば辛かったのもあった。
何度となく繰り返したさよならの後には、なにが残ったのかなって最近ふと思ったりして…。
なんとなく振り返りたくなったので、ゆっくり思い出してみようかなって思った…


俺が『男も好きかな』って思うようになったのは中学生半ばだったかな。
その頃の俺って、成績は常に良かったみたいだった。部活は特にやってなかったけど、夏だけ存在する陸上部は強制的にやらされてた。まぁほどほどって感じで。
しかも富士山と湖がある田舎町で、同級生ばかりか学校のほとんどの生徒がどんな家庭かってお互いわかっちゃってるくらいの田舎だし、真面目にしていないと親の顔に泥を塗る事になるから、ただただ大人しく真面目にしていたと思う。
だからかな、好きになるタイプは自分にないワルな感じで…苦笑。クラスの不良グループを遠巻きに見てるだけってな生活だった。みんなにも『真面目君』で通っていたと思う。
だから楽しみは体育の時の着替えと修学旅行の風呂くらい。覚えたオナニーもそんな時に見たを想像してやってたくらい…。ホントつまんない中学生活が過ぎて行った。
高校受験になって、その地域では歴史のある隣町の公立校を選んだ。
合格はしたものの一つ難関がある。二つの公立校が一緒に受験して、成績順にどちらかの学校に振り分けられるんだ。同じ学校からはたくさん合格したのに、いざ蓋を開けたら、同じ学校に進んだのが俺を含めて3人だけ。しかも残り二人は女子じゃん!友達できるかなーって先行き不安なまま高校に入学となった(ちなみに、俺には一つ上の兄と、三つ違いの妹がいるけど、三人とも同じ高校に!笑)

高校でクラスが決まったけど、俺にとっては転校生みたいな気分と同じ。クラスの誰も知らないんだからね。
でも俺には救われる事があった。同じ中学の奴がいないって事と隣町って事で、真面目にしてる必要がなくなった!すごく肩の荷が下りた感じがして、自分でも弾けちゃえーって思った。

いろんな学校から集まってきてるクラスだったけど、なんとなく仲の良い奴って徐々にできてくるもんで…。真面目な感じ、ワルぶった感じ、自然に色々なグループになっていった。
俺はと言えば、やっぱりワルな方に気が引かれていく。学ランもちょっとルーズに着たりしてたからかな、いつのまにかワルグループに取り込まれていく形になった。俺はグループの中で、見た目からか、結構みんなに可愛がられるって存在だったみたい。
学校は全部で一学年8クラス。4クラスずつ2棟に分かれていて、これは各学年一緒。他に実験棟とそれ以外の棟の全部で4棟。他に体育館と部室、グラウンドって感じ。自然に囲まれたきれいな学校だ。
一年の最初はクラス5人くらいのグループだったけど、夏休み、秋の学園祭などを過ぎて、段々と別クラスの友達も増えてグループも発展して行った。
そんな中で一人気になる奴がいた。別棟のクラスのアイツ、光(ヒカル)だ。
ヒカルは178cmくらい。173cmの俺よりちょいデカい。茶髪でミディアム。今思えばちょっと小栗旬みたい(誉めすぎかな笑)。別棟のクラスなんで、俺は秋までヒカルに会った事がなかった。

ある日クラスの仲間の仁(ヒトシ、あだ名はジン)と一緒に帰ろうとした時だった。
仁「もう一人別の奴が一緒に帰るよ。初めてだろうから紹介してやるぜ」
俺「どんな奴なん?」
仁「鋭い目つきの見た目通り、ありゃ学年一のワルだな〜」
紹介される前にそんな事を聞かされたから俺はちょっと緊張してた。そして玄関まで行ったところで…。
仁「お〜い、こっち〜!」
ジンに呼ばれ黙って俺達に近づいてくる奴。目の前に来てまっすぐに俺を見て向かいあった。ホント怖い目だ…。それに無表情でいる。
仁「お互い初めてだろ?こっちがヒカル。こっちは俺と同じクラスのシュウ」
ヒカルはなにも言わずじっと俺を見ていたが、いきなり右手を出してきたので一瞬殴られるかと思った。一瞬身構えたが、殴るんではなくて俺の左頬を軽く引っ張ってきただけだった。
光「可愛いじゃんか」
一言だけ無表情で言った。
俺「…グニっ…」
唐突な出来事に俺は意味不明な声を出す。
俺「手を離して!」
ようやくそれだけを絞り出した。
直ぐに手を離してくれたけどまだ無表情で俺を見ている。俺も頬の痛さに気づかず無表情で見返し、しばらく睨み合いが続いた。
仁「まぁまぁ帰ろうよ、なっ」
これがヒカルとの初対面だった。

その日は近くの駅まで3人で向かう。ジンが真ん中で、場を和ませようと話す。
仁「お互いに、前もって俺が話しといた事で間違いなかっただろ?笑」
光「まぁな」
そっけない表情だ。
俺「なんてヒカル君に伝えたの?」
仁「かわいい顔してるって」
ちょっと照れくさくなって俺は顔が熱くなった。そんな俺の顔を、ヒカルがチラッと見た様な気がした。
光「また頬をひっぱりたくなってきたな。俺の事は、なんてジンから聞いてた?」俺を見ずに、前を向きながら質問をしてくる。
俺がジンの顔を見ると、ジンは目配せをしてきた。
俺「怖そうだけど、ホントは優しい奴だって」
ジンの様子から判断して、そう即答した。
一瞬、俺にはヒカルの口元が緩んだように見えた。それを見てなんとなく盛り上げてみたくなる。
俺「でも女の子に対してはすごい遊び人だって言ってた」
笑ってそれを付け加えた。
ヒカルはジンの顔をいきなり睨みつけて、ケツに軽くケリを入れた。
ジンは明るい性格なんで、俺の冗談やヒカルのケリにも笑ってごまかしてるだけだった。
そんな感じで駅につき、ヒカルだけ別の方向だったんで別れる事になった。
その後ジンと二人で帰りながらヒカルの事を聞いてみた。
中学でバスケをやってた事、無表情はいつもの事、喧嘩早いって事、怒ってる風に見えても根は優しい奴だって事、かなり女の子にモテるけど怖いから近寄る人があまりいないって事、最近まで彼女がいたらしいって事…。
家に帰ってからその夜も、俺はベッドの中でヒカルの事を考えてた。
クールな性格、ちょっとキツいけどかっこいい顔立ち、長身で締まってるであろう身体。
『どれをとっても女の子が放っておくわけないだろなーまぁゲイでもバイでもないだろし、友達ってところか…』
そんなことを考えていて、その日はいつのまにか眠ってしまっていた。

その後冬休みから三月へと、寒い冬もあっという間に駆け抜けていった。
ヒカルとはたまに学校ですれ違う時に挨拶するくらいで、なにも進展しないまま春休みを迎え、二年生へと進級していく事となる。
進級前の春休みに、俺は初めてジンの家に遊びに行った。俺だけが隣町だから今まで知らなかったが、最近ジンの家に仲間で集まる事が多くなってるらしい。
メンバーは俺を入れて5人。俺とジンとヒカルに残り2人(この5人は、これから卒業するまでいつも一緒にいる仲間となる)。
この時に初めて聞いたが、俺とヒカル以外は進級とともに同じクラスになったらしい。しかも別棟でだ。
俺は元々進学クラスを選んでたから1人になる事はわかってたけど、俺と同棟の別クラスにヒカルだけが1人となった。
ヒカルは一匹狼みたいな性格だから『1人がいい』なんて言ってるが、本心なのかどうかはわからない。
仁「ワルさをするグループのうちの、特にヒカルだけをわざと俺らから遠ざける先公の策略だな。一番のワルだからな」
俺『ホントこいつら集まると悪い事ばっかするんだからさ』
それについてはまんざらでもないかなって俺も思うが、クラス編成だけは受け入れる以外にどうしようもない。
みんなブーイングだったけど、今まで黙ってたヒカルが騒ぎにまみれて話しかけてきた。
光「俺ら一緒の棟だな。よろしくな」
そう言って握手を求めてきた。素直に笑って手を出す俺。
俺『ちょっとハズいな。顔が熱いや』
そう思ってチラっとジンを見ると、俺らの様子を見て一瞬驚いたようだったが、その後薄っすら笑みを浮かべていた。
夕方になり2人が先に帰り、残っってしばらく話をしていたヒカルと俺も帰る事になった。
ジンの家を出てしばらく歩くが、お互いに、というよりヒカルが無口なんで2人でいても会話がまるでない。
そんな中ヒカルが唐突に話しかけてきた。
光「俺さ、原チャリ買ったから、今度シュウの家まで遊びに行ってもいいか?おまえ1人が田舎者だから、俺が行ってやるよ」
俺『このカタブツが、そんな事自分から言うんだ…』
そんなことを思いながらも、ちょい嬉しくなる。
俺「ゴールデンウィークでもくれば?」
そう笑顔で返してみる。
光「おぅ!行くぜ」
無表情だがヒカルはいつもより明るく答えた。
その日はこれで別れる事になった。

その日の夜、ジンからメールがあった。
仁『おまえと一緒だと、ヒカルは明るくなるよ』
なんかいろんな事がすごく嬉しかった日だ。ジンからの携帯メールをずっとニヤニヤ眺めながら、いつのまにか眠りについた。

そして新学期が始まりそれほど経たない4月中旬、ついにあの日がやってきた。

新学年になると俺のクラスは男ばかりになった。何人かカッコいい奴もいてすぐに友達になれた。ただ全体的に流れる雰囲気は『勉強一色』って感じ。『ここは勉強する場所』みたいな…。まぁ仕方のない事ではある。
唯一の楽しみは、昼飯を食べ終わる頃になるとほぼ毎日ヒカルが遊びにくる事だ。この頃のヒカルは相変わらず無表情だが、少しずつ笑顔を見せるようになってた。
俺『いつもの5人メンバーがいないと、素直な明るい顔をするのかな』
密かにそんな事を考えていた。

ある日の昼飯後、いつものようにヒカルがやって来た。
光「おまえさぁ、次の授業サボんない?」
俺「無理っしょ」
光「いいじゃんかよ。たまにはさ」
これでもいつもより多弁な方だ。
ただ実際には俺も疲れていた。ちょうど午後からは理系の俺にはあまり関係ない文系授業だ。
俺「何するの?」
光「図書館行ってダラ〜って感じで」
俺「分かった。でもなんか一つだけ願い事を聞いてくれたらね」
光「いいよ?なに?」
俺「週末に原チャリでどこかに連れてって?」
光「2人乗りなんて原チャリじゃ無理だよ。しかも警察に捕まったらどうする!」
俺「ヒカルの口から、警察を怖がるセリフがでるとは思わなかったな〜(笑)」
それを聞いてヒカルはちょっとムッとした顔になった。
光「わかったよ。おまえン家の近くでならな」
元々ヒカルと週末に一緒に居たかったわけだから、それでOKした。

俺の学校の図書館は、やたらと立派だ。本の多さはかなりのもので、中二階まである。そこを上がっていくとどこからも見えなくなるトコがあって、しばしば3年の不良の溜まり場になる。
ただし今は授業中なんで誰もいない。二人でそこに入っていき、俺は椅子に座り、テーブルで何となく本を読んでいた。ヒカルは後ろで腕立て伏せなんかをしている様だった。
20分くらい経って、昼過ぎという事もあり眠くなってきた俺は、腕を上げて伸びをした。
俺『ふぅ』
そのまま椅子の背もたれに、エビ反りになるように伸びを続けた。ふと、後ろで立っていたヒカルのケツに手が当たる。筋肉質な感じが手応えとして感じられた。
ヒカルもそれに気づくと、いきなり俺の両手を押さえてきた。
俺はエビ反りのまま固定されてしまう。
俺「あっ!痛い!痛いって!離せよ」
光「いいよ、ただしお願い事を一つ聞いたらな」
さっきの逆だ。
俺「いいよ、何?早くして!」
ヒカルは俺の顔をじっと見てる。俺もヒカルを下から逆さまの状態で見つめた。その状態でしばし無言が続く。


引用なし

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