俺は恋人なんて真剣に好きになって出来たことなかった。欲しいモノ、欲全部が手に入ってたんだ。だから今まで心底好きになって、必死で苦しんだコト、なかったんだ。
でも、今は違う。
本当の恋をした。側にいるだけで、こう、なんだか・・・今まで感じたことのない暖かさ、その人と離れる寂しさ。こんなの初めてだ。
今、隣にシンゴがいる。シンゴの気持ちは本心かどうか根拠なんかない。でも、彼は俺に正直になってくれた。俺だけのために。
そっとシンゴをみる。目が合う。ドキドキする。
終着につく。一番最後に降りる。辺りは真っ暗で、誰もいなくて、駅の光だけだった。二人で無言で駅の改札に向かう。俺はすぐ立ち止まった。シンゴもすぐに気づき止って振り向いた。
「・・・シンゴ・・・」
俺は下を向きながら言った。髪が長いから顔が見えなかっただろう。俺は泣いてた。 自分が変わるときってこんなに震えて涙が出るんだ。そう思った。
「・・・せいやさん・・・?」
シンゴがそっと聞いてきた。
「・・・俺、俺怖くて・・・自分が素直になんの怖くて・・・俺、どうしたら、どうしたらいいの・・・?」
その瞬間シンゴが俺の顔を両手で抱きしめてくれた。暖かい。息遣いが聞こえる。
「こんでよくないですか。。。スマートじゃなくても。上出来じゃんっ!!」
「・・・・シンゴ・・・・好きだったんだ・・・・」
こんな彼に頼ってる一つ上の俺。立った一言言うのにこんなに勇気が入るなんて。後から考えると笑える。
「・・・・先輩、・・・おれもっすよ・・・」
そっとシンゴがつぶやいた。