俺は体が動かなかった。
耳元で櫻井先輩に告白された。
「何…いってるんですか…」
「ずっと気になっててさあ…特別お前のことを意識してたし…今までにいなかったんだ…。お前みたいなやつがさあ……」
「はあ…」
話が途切れてしまった。
俺は先輩に抱かれたままだった。
強く抱き締められた。苦しかった。
「あぁぁ…くるしい……」
「ああ、ゴメン」
俺は下をむいてしまった。
先輩はどこをむいているのかわからない。
「あ、あの…。」
俺は口を開いた。
「ん?」
「俺…男に告られたことないんで…わからないです……」
こんなこと言いたくなかった。
どんなことを言えばいいかわからなかった。
「だよなあ」
先輩は笑っていた。その笑顔は、なんか寂しそうに見えた。
「お前はわかんないけど俺はお前のことすっげー好きだからさ。好きになってもらえるように頑張ってみるよ」
「はあ…。」
もちろん、頑張ってなんて言えなかった。
「じゃあ…」
そう言うと先輩は俺をもう一度抱きしめた。
「今日だけ俺の好きにさせてくんねえかな」
その言葉に頷きたかった。でも、とまどった。
「何…するんですか…?」
その後先輩は俺にキスをしてきた。ビックリして声も出なかった。抵抗もできなかった。前にあるのは目をつむっている先輩の顔。俺は目を閉じた。
すると妙な違和感が。
歯をくいしばっている俺の歯がくすぐったい。舌が入ろうとしていた。
はぐきをやさしくなぞられた。
「ん…」
声が漏れた。ヤバイ。このままこれが続いたら……。
そんなこともなくきつく抱き締められた。
苦しかった。
「あ……あっ…んん……」
口を開けた途端舌がはいってきた。
必死で舌が当たらないようにした。でも無理だった。舌と舌が絡んで、気持ちがふわふわしていた。
俺は、いままで感じたことのない経験をしようとしていた。