「ちょ、いけるから。。ほんと。。」
俺は彼のオーラで普通に断れなかった。彼のまなざしは真剣で彼の手の汗ばんだ感覚を、制服一枚からでも感じ取れた。
「ケッコーきつかったもん。あいつ力こめてたからな。。」
彼にわき腹を触られた。
「いける?本間に?かなり痛いんじゃないんすか?すぐ終わるから。五分ぐらいですよ。」
気遣いは嬉しい。でもほんとにいたかった。この後何もないし、マジで痛いから保健室、行くほうが懸命だな。っと思った。
歩きながら、彼の大きな背中をみた。じりじりと暑い夏。彼の腕が汗ばんでる。普通なら汚らしいと思うけど、なんかそれは特別で。今さっきまでクーラーの効いた温室野菜みたいな俺とは正反対の光景。おまけに変な具合で二人で保健室にいく。変わってるよな。今日は。
保健室はすぐ目の前だった。
「ほんとすいません。俺が取らないから悪いんです。」
名前も知らないやつに、保健室の中で謝られる。訳わかんない。
保健室は誰もいなかった。ただ風通りがよくて涼しく感じた。カーテンがゆれている。俺は洗面台の側に座った。彼はしゃがんでシップと氷を探してた。
「じぶん、もどったら?鍵俺後で返しに行くから。」
別にこいつは悪くない。ただ不運だっただけ。体育科の割りに親切だな。そう思った。氷を冷蔵庫から取り出した。そうすると彼は氷を一つ、口にいれた。氷をビニールに入れ、こっちにやってきた。
「ありがと。」
彼にそういうと俺はシップと氷のはいったビニールを受け取ろうとした。
「・・・シップ貼るんで。・・・俺。」
氷を少し食べながらモノをいう彼の顔がとてもかわいらしい。俺は遠慮なく貼ってもらうことにした。