髪は濡れたままで、急いでチャリ置き場に向かった。
友達には、先帰っててとメールした。
チャリ置き場に着いた。
するとそこにはすでに先輩はいた。
「ホラ急げー」
急いで速歩きをした。
「後ろ乗んなあ」
そう言われて黙って頷いた。
自転車は最初よろめきもしないで走り始めた。
黙って夜風に当たってたら、
「お前どこつかまってんの?」
と聞かれた。
「さきっちょですよ」
と答えた。
「危ないから掴まれ」
「どこに?」
すると櫻井先輩は少し間を空けて、
「だから……肩とか…腰とか……。」
俺は背高の関係で肩をつかめなかったので腰につかまった。
そこからあまり会話が無く、街を抜け、人が住む郊外にいた。すると前の左の曲がり角から車がいきなり出てきた。
「うおっ」
先輩が急ブレーキをかけるとその反動で俺は先輩の背中に頭をぶつけてしまった。
「いってぇ…」
「大丈夫?」
「大丈夫です」
「危ないからしっかりつかまってろよ」
「はい」
俺は腰に手をあてた。
「それだから危ないんだよ」
そういうと櫻井先輩は俺の手をひっぱって抱きしめさせるようにしてつかまらせた。
「これで大丈夫だら」
なんか恥ずかしかった。
背中は汗のにおいがした。
その後会話もすることなく、家まで乗せてってくれた。
「ありがとうございました」
軽く会釈して家に入ろうとした。
「ちょっと待って」
「なんですか?」
少しためらって、
「メアド教えて」
と言われた。
「いいですよ」
俺は笑顔で答えた。