昔、禅の高僧がいた。
彼は歳老いて死に際して弟子や信徒達から最後の言葉を求められる。
みんなこれだけの立派なお坊さんなら、さぞかしありがたい話しが聞けるだろうと期待した。
だけど彼が言ったのは一言 「死にたくない」 それだけ。
弟子が慌てて聞き直しても「死にたくない」。
こんな時に我々を和ませようとしなくて結構です、本当の辞世の言葉をお願いします。再度弟子は尋ねた。
返ってきた答えは 「本当に、本当に死にたくないんじゃ」
死が怖いのは誰でもそう。人は知らないモノを恐れる。俺も死ぬのが怖い。 でも相方が死ぬ方がもっと怖い。
相方がいなくなって葬式をして墓に入れて、思い出と一緒に残りの人生を生きていかないと…そう考えると正直出来るか不安だ。
死が今ある生活を壊してささやかな幸せも破壊してしまうだろうって事が怖い。
だから有史以来色んな人達が「死」に意味付けを行ってきた。
宗教、思想、哲学…
俺は君に宗教に入れとか言うんじゃなく、特定の思想や哲学的に生きろって言うんでもなく、ただ、どんな人がどんな風に死を、恐怖を乗り越えていったのか。それを一つの「物語り」として調べて、読んでみるのも良いのかもって思うよ。