皆さん始めまして、こじろうと申します。
僕は、留学生で、音楽をやってます。去年の十一月から本格的に勉強が始まって、一応一学年目は終わったのですが、まずは、これまでの十ヶ月間についてざっと話したいと思います。彼とはじめてであったのは、音楽史の授業のときでした。初めの頃は、言葉もあまりよく分からず、右も左も分からない状態で、とにかく授業に必死で食らいつくので精一杯だったので、一番最初の授業では、彼が居たことさえ分からなかったのですが、二回目のとき、先生が三十分ほど遅刻してきた日でした。
教室の外で、生徒達が数人待っていて、教室からはジャズの音が聴こえてきました。生徒達に、「どうしたの?」と聞くと、「中で誰かがピアノを弾いてる」といわれて、恐る恐るはいると、ピアノを弾いていた彼は突然立ち上がって、「はじめまして!」といって気さくに握手を求めてきました。「なんでピアノ弾いてたの?」と聞くと、「ピアノが好きだから。」と彼。「君はジャズピアニスト?」と聞くと、「打楽器だよ。」といわれ、びっくりしました。あまりにも上手だったから。それだけじゃありません。アジア人(外人)というだけで、差別する人も居るのに、彼はまったく違って、自分から進んで、あまり言葉もしゃべれない外人を歓迎してくれたのです。
それから、授業を重ねるたびに、だんだんと仲良くなっていきました。
自分の名前の意味を教えあったり、今どんな曲弾いてるか、どんな音楽がすきかとか、知るたびに、新しい発見があって、楽しかった。
ある日、こんなことがありました。中休憩のとき廊下でみんなとしゃべってるときに、僕が彼に「今日朝なんも食べてないんだよねー。マジ死にそう。」っていうと、かれは無言で自分の席に戻って何か取ってきて、「これ食べなよ」といって、ビスケットをくれました。
またある日、授業で先生の言ってることがさっぱり分からなくなってしまった時に、彼に「今なんて言った?」と聞くと、彼は無言で僕のノートを引っ張り、一気に書いてくれました。
そんな感じで、いつも彼は僕のことを何も言わずに、一番嬉しい方法で助けてくれるのでした。気付いたら大好きになってました。
そんな日々が続いて、テストの期間が始まった頃、僕は他の授業のテストと、音楽史の授業が重なって、途中で抜けなければならない日がありました。
その日の授業後に、彼にノートを写させてもらっていたら、彼が「なんかお礼にピアノ弾いてよ」と言われ、一時間ほど彼に演奏したり雑談したりしました。その日の帰り際に「今度の僕のテストの曲一緒に弾かない?本番は、生徒みんな指定された伴奏者と弾かなきゃだから、練習のためなんだけど、それでも良かったら。」と言われました。もちろんOK。楽譜を渡され、びっくりするぐらい難しかったけど、必死に勉強して一週間で弾きこなせるようにしました。それから彼と合わせていた時間は、本当に楽しくて、夢中でした。彼は完ぺき主義者で、いつもぎりぎりまでやりきる人でした。なんでも物を大切にして、ノートや楽譜はいつでもきれいに使っていました。彼に「僕のテストが終わったら一緒に二人で打ち上げだね!」と言われた僕は、その打ち上げの時には、もう言ってしまおうと思いました。
彼の本番の日、授業をサボってテストを聞きに行くと、恐ろしいことが起こってしまいました。彼は、自分の力を過信したのか、楽譜をおかずに本番を迎え、途中暗譜が飛んで一分ぐらい止まってしまいました。本番後の楽屋を訪ねると、彼は本当に落ち込んでいて、やりきれない顔をして泣くまいとしていました。「本番前のリハは、完璧だったんだ。」目を必死で閉じながらそんな事を言う彼を見ていたら、(あんなにがんばったのに、あんなにうまく弾けてたのに、うまくいくはずなのに、うまくいかないんだ)と思ったら、なんだか自分の彼への気持ちと混ざって、彼の前で号泣してしまいました。それでも彼は泣かなかった。そんな彼に申し訳なくなってその場から逃げてしまいました。気持ちが落ち着いて、もう一度彼と話しに行くと、「さっきは僕のために泣いてくれてありがとう。」と言ってくれました。それでもやはり意気消沈した彼は、結果も聞かずにすぐに田舎に帰ってしまいました。
当然打ち上げはなし。彼にメールで夏休み中会えるか聞くと、無理だとの返事。
これが、これまでの十ヶ月間のはなしです。
彼はのんけです。遠い田舎に彼女がいてあまり会えないそうです。
そんな彼をここまで好きになってしまった僕は馬鹿かもしれません。
でも、どうすればいいか僕自身分からないんです。
彼と友達としてでも、失いたくない。
言って忘れるべきかもしれない。
皆さんのアドバイス、お待ちしています。
こじろう。