【白】
空から落ちてくる雨の雫が
水溜まりに輪をつくる
余計なことまでも
口に出す
「俺はキタナイよ」
「…」
「男とキスをするんだぜ」
「…」
「気持ち悪いだろ」
唇をかむ
俺が言いたいことはそんなんじゃない
なのに今まで溜めてたものが溢れ出る
「キレイなおまえが可哀想だ」
「…」
強がりが邪魔をする
「…そろそろ学校行けよ」
公園を出ようとして
あいつの横を通りすぎたとき
後ろから腕を強くつかまれた
「…言いたいことはそれだけ?」
雨は額を伝わり首をつたう
「キレイだとかキタナイだとか」
「…」
「そんなもので人を振り分けんの?」
「…」
「おれはキレイじゃないよ」
だって
他の人と仲良く話しをしてるきみに
友達じゃない感情を抱いた
おれは男として嫉妬したんだ
「きみもキタナクなんかない」
友達としてでなく
もっと特別なものを望み
独占欲に支配され
一人占めしたいと願ったこの気持ちを
きみはキレイだというなら
いま素直に心を打ち明けて
目の前で泣いてるきみのほうが
その何百倍もキレイだ
おれはきみを後ろから抱きしめる
「やめろよ同情は」
「ちがう」
雨足が弱まる
「おれは…たぶんホモじゃないけど」
「…」
「…もうノンケでなくてもいい」
「…」
「きみを好きでいられるなら」
ノンケに
男を好きになる資格が
ないのなら
「おれはホモだっていい」
体が震える
きっとその熱が伝わり
嘘じゃないことを伝えたと思う
「…俺」
「…」
「おまえとキスしたい」
ゲイやノンケという言葉に
どれほどの意味があるのだろう
言葉には心が宿っていて
心に通じあうものがある
だったら男同士にだって
愛という言葉があっても
いいと思うんだ
向き合う二人
雲の隙間から光がさす
それはおれらがする
このおこないが
決して間違いではないと
背中を押してくれているみたいに
「おれもキスしたい!」
めいっぱいの笑顔で
めいっぱいの愛で
泣きながら笑って
笑いながらキスして
お互いの温度を確かめあって
少なくともこの時間だけは
ぜったいにキレイだ