結局ホラー映画の企画はのらりくらりとかわし、SFとかアクションに(俺が)もっていきつつ、恒例の映画鑑賞会は事なきを得ていた。
大体ホラー映画は結構見たのだ。俺も時間が経てば恐怖は和らぐし、恐怖感が更新されなくて良かった。
季節は12月。もうだいぶ年末が迫ってきている。親からも帰省するのか、というメールが来ており、まぁ俺は帰省することとする。
実家には10個下の妹がいる。俺が大学で上京した時は8歳だったけど、今は16歳。
久しぶりの帰省だからお年玉とか上げた方が良いのかな。なんて考えながら家に帰ると、シンタロウが珍しく家に居る。洗濯をしているところのようだ。
「あ、おかえりなさい。」
「ただいま〜。」
なんとなく、久しぶりのやり取りにほっこりする。やっぱ人がいるって良いな。
俺は一応シンタロウの年末の予定を聞いておく。
「年末、どうする?実家に帰んの?」
「あー俺帰んないっす。こっちに残ります。」
「そっか。じゃあ戸締りとか気をつけてな。」
そんなやりとりをしつつ俺は一旦部屋に戻る。
戻ってマフラーを外しながら、一応実家の住所知らせておこうと思い直す。
住所を紙に書いてリビングに戻る。冷蔵庫に貼り ながら
「これ、俺の実家の住所と電話番号ね。なんもないと思うし携帯もあるけど、なんかあったらここ連絡して。」
「はーい。カズさんて北関東出身なんですね。」
と言いながらシンタロウが俺の横に並ぶ。やっぱり小さい。
「そだよ。シンは?」
「俺山梨です。」
「あー山梨なんだ。親の顔見なくていいの?」
と俺が聞くと、ちょっと変なテンポがあってから
「ん・・・だいじょぶっす」
と小さめな声での返答。なんかあんのかな。まぁいいけど。
「そっか。まぁそんなわけで、俺30日から1日までここ空けるからよろしくな。」
「わかりましたー。」
シンタロウがそう返事した直後に洗濯機終了の音が鳴る。シン タロウは洗面所へ向かう。
なんだか、俺ら、もともとそんな気が合わない方ではないような気がしてきた。
兄弟とかいたらこんな感じなのかな。特に気まずかったり、気遣う感じじゃない。
会話もなんも考えなくてもスルスル出てくるし、沈黙になっても別に良い。
話しかけられてもうざいとか思わない。なんだか初めての人間関係に触れた気がした。